研究課題
ヒト正常糸球体血管内皮細胞を培養し、ウイルスの二本鎖 RNA を mimic する試薬であるpolyinosinic-polycytidylic acid (poly IC) で処理したところ、plasminogen activator inhibitor-1 (PAI-1), interleukin-6 (IL-6)、CXC3L1 (fractalkine) の発現が促進することを見出した。PAI-1 は血栓形成に促進的に働き、IL-6 は炎症を促進し、CX3CL1 は単核球の接着・遊走に関与する接着因子・ケモカインであり、これらの反応は、糸球体における生理的な抗ウイルス応答や、慢性炎症の病態に関与していることが考えられた。また、この poly IC による これらの発現誘導は、パターン認識受容体の一つである Toll-like receptor 3 (TLR3) のノックダウンにより、抑制された。このことは、TLR3 シグナルが腎臓における慢性炎症に関与していることを示唆するものと思われた。また、innate immunity の key cytokine である interferon (IFN)-beta をノックダウンすると、IL-6、CX3CL1 の発現が抑制され、転写因子の NF-kappa B p65・IRF3 のノックダウンにより、CX3CL1 の発現が抑制された。これらの分子群は相加的、相乗的に慢性腎炎の病態に関与していると考えられた。さらに、細胞をクロロキンで前処理することにより、PAI-1 および CX3CL1 の発現が抑制された。クロロキンはその機序がよくわからないままに慢性腎炎の治療に使用されているが、その効果の一部は、PAI-1 や CXC3L1の発現抑制によるものと考えられた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Modern Rheumatol
巻: - ページ: -
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