研究課題
全身性エリテマトーデス(SLE)は妊娠可能な20~40歳代の女性に好発する多臓器に障害をきたす慢性の炎症疾患である。SLE 合併妊娠では新生児ループス、流産・早産、胎児発育不全、 妊娠高血圧症候群等の合併が高頻度で出現し、妊娠予後が不良であることから、新規治療法の開発が急務である。そこで研究初年度は1)TLR4シグナルに着目したSLE合併妊娠モデルマウスの作成と2)ニコチンアミドの治療効果について検討した。SLEモデルマウス(MRL/lpr)は妊娠しただけでは腎障害や妊娠予後が悪化しないことが報告されている。そこでSLE及び妊娠高血圧腎症共通の増悪因子であるTLR4シグナルに着目した。膣栓確認後14.5-17.5 dpcにTLR4のリガンドであるLPS(14.5 dpc: 20μg/kg/d、15.5 dpc-17.5 dpc: 80μg/kg/d)を投与し、18.5 dpcにサンプルを回収した。LPS投与により妊娠SLEマウスにおいて母体血圧が上昇し、流産率、胎児発育不全、ループス腎炎が増悪した。これらの変化はコントロール妊娠マウス(MRL/+)及び非妊娠MRL/lprマウスでは認められなかった。以上よりTLR4活性化がSLE合併妊娠の重要な増悪因子である可能性が示唆された。ビタミンB3誘導体の一つであるニコチンアミドは妊婦に投与可能な薬剤であり、酸化ストレスや内皮障害を改善して妊娠高血圧腎症モデルを改善させる(Sato H, Takahashi N, PNAS 2016)。LPS投与妊娠SLEマウスにニコチンアミドを投与したところ、血圧が減少し、胎児発育不全や流産率が改善した。腎臓における炎症性細胞の浸潤、炎症性サイトカインの発現が軽減した。以上よりニコチンアミドはSLE合併妊娠の妊娠予後、ループス腎炎の悪化を抑制する新規治療薬である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ほとんど計画通りに進んでいるが、異なったモデルでの検討がまだ終了していない。
異なったSLE合併妊娠マウスを対象とした研究を行う。また、IgA腎症非妊娠マウスおよびIgA腎症合併妊娠マウスを対象としたニコチンアミドによる治療効果の評価およびニコチンアミドの治療効果評価のためのサロゲートマーカーの確立を行う。
異なったSLE合併妊娠モデルマウスでの検討が終了しておらず、次年度継続して検討するため、実験経費を残した。
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