研究課題/領域番号 |
17K09682
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 博 東北大学, 薬学研究科, 教授 (60215829)
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研究分担者 |
佐藤 恵美子 東北大学, 薬学研究科, 助教 (20466543)
高橋 信行 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (40588456)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)は妊娠可能な20~40歳代の女性に好発する多臓器に障害をきたす慢性の炎症疾患である。SLE 合併妊娠では新生児ループス、流産・早産、胎児発育不全、 妊娠高血圧症候群等の合併が高頻度で出現し、妊娠予後が不良であることから、新規治療法の開発が急務である。そこで我々はTLR4シグナルに着目し、妊娠SLEマウス(MRL/lprマウス)に低用量LPSを投与することで、腎障害悪化や高血圧症を発症する新たなSLE合併妊娠モデルマウスを開発した。ビタミンB3誘導体の一つであるニコチンアミドは妊婦に投与可能な薬剤であり、酸化ストレスや内皮障害を改善して妊娠高血圧腎症モデルを改善させる(Sato H, Takahashi N, PNAS 2016)。LPS投与妊娠SLEマウスにニコチンアミドを投与したところ、血圧が減少し、胎児発育不全や流産率が改善することを見出した。さらに腎臓における炎症性細胞の浸潤、炎症性サイトカインの発現について検討した結果、これらの発現が減少し、炎症が軽減することが分かった。また酸化ストレスマーカー(4HNE)を測定し、その関与を検討した。ニコチンアミドはSLE合併妊娠の妊娠予後、ループス腎炎の悪化を抑制する新規治療薬である可能性を示し、成果を学術誌に投稿した。さらに異なる腎障害モデルとして妊娠IgA腎症マウスに対してニコチンアミドの効果を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
IgA腎症合併妊娠に対するニコチンアミドの治療効果の評価 (1) IgA腎症非妊娠マウスを対象としIgA腎症病態に対するニコチンアミドの効果を調べる。 本研究では早期から蛋白尿、血清IgA高値、メサンギウム細胞・基質の増殖などの症状がみられるIgA腎症自然発症モデルのgddYマウスを使用する。我々はニコチンアミドが妊娠高血圧腎症における腎障害・母体高血圧を改善することを見出しており、ニコチンアミドによるIgA腎症の病態(高血圧、蛋白尿、腎障害等)改善が期待される。そこでIgA腎症非妊娠マウスにニコチンアミドを投与し、腎臓における組織学的変化および炎症性サイトカインの評価を行う。 (2) IgA腎症合併妊娠マウスを対象とし妊娠合併症に対するニコチンアミドの効果を調べる。我々の予備検討から、IgA腎症モデルマウスが妊娠することで、妊娠高血圧腎症のような病態が現れることを確認している。そこでIgA腎症合併妊娠マウスに、ニコチンアミドを投与し、胎仔重量・母体高血圧、腎臓や胎盤の組織学的変化、血管新生に関わる因子の変化を検討し、治療効果を評価する。
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