研究課題/領域番号 |
17K09683
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
藤田 浩樹 秋田大学, 医学系研究科, 准教授 (30333933)
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研究分担者 |
山田 祐一郎 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (60283610)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内科 |
研究実績の概要 |
消化管由来のホルモンであるインクレチンGlucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)が糖尿病性腎症の病態において腎保護効果をもたらすのか解明することを目的として研究を遂行した。 まず、平成29年度までの研究結果として、腎臓の各部位からmRNAを抽出しGIP受容体(GIPR)の発現量を定量RT-PCRにて調査したところ、GIPRは腎臓において尿細管よりも糸球体や血管で強く発現していることが確認できた。 次に、平成29~30年度には、糖尿病状態下においてGIPRからのシグナルの減少が腎臓にどのような影響をもたらすのか解明するため、非肥満型インスリン欠乏型C57BL/6-Akita糖尿病マウスのGIPRシグナルを遺伝的にさらには薬剤性に減少させる実験を行った。具体的には、GIPR欠損C57BL/6-Akita糖尿病マウスの作製、C57BL/6-Akita糖尿病マウスに対しGIP分泌抑制効果をもたらすことが報告されているミグリトールの投与を行い、臨床的パラメーターの測定と腎臓サンプルの採取を行った。ミグリトールの投与実験では、アルブミン尿や腎糸球体組織病変の変化は観察されなかったが、おそらく臨床的に用いられるミグリトールの投与量では腎臓に影響を与えるような十分なGIP分泌抑制ができないものと考察された。一方で、作製したGIPR欠損C57BL/6-Akita糖尿病マウスの解析において、経時的なアルブミン尿の増加、腎糸球体組織病変としてメサンギウム基質の増加や間質の線維化の進行、またMDA染色により腎における酸化ストレスの増加が観察された。 これらの結果から、GIPは腎保護的に働いているものと考えられ、現在GIPRシグナル伝達系の中心をなすcAMP/PKAの腎臓内における変化とそれによる腎保護に関わる分子機構の解明に向けて研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究実施計画で予定していた実験はほぼ終了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、GIPは糖尿病状態下において腎保護的に働くことが確認された。この背景にある分子機構を解明するため、本年度も引き続き、GIPRシグナルの腎臓内セカンドメッセンジャーの中心となるcAMP/PKAのレベルの変化について調査を行うとともに、それによる腎保護に関わる分子機構の解明に向けて研究を進めていく。さらに、GIPの腎保護効果を検証するため、当研究室で開発した進行性糖尿病性腎症を発症するAkita糖尿病マウスKK/Ta-Akitaマウスに対してGIPの投与実験を行い、糖尿病性腎症の進展が抑制できるのかどうか調査を行う。また、平成30年度にGIPR欠損KK/Ta-Akita糖尿病マウスの作製を完了しており、HE、PAS、マッソントリクローム染色標本を作製し、組織病変の変化について対照群と比較し評価を行う。WT1染色による上皮細胞数の評価、MDA染色などによる腎臓内酸化ストレスの評価、フィブロネクチン免疫染色による腎臓内線維化の評価も行い、GIPR欠損によるGIPRシグナルの減少が進行性糖尿病性腎症モデルにおいても腎病変のさらなる進行をもたらすのか調査を行う。
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