研究代表者は、臓器再生研究においてES・iPS細胞由来キメラ腎臓・膵臓の作成に成功し、国内外で評価を得ている。その研究技術・成果を活用可能な腎臓発生や老化のメカニズムを応用し、複数の腎臓研究課題を進捗している。腎臓病の病態解明・治療法開発として、プロジェクトA:腎発生のKey転写因子であるTcf21等の腎疾患・蛋白尿制御への関与の検討を、プロジェクトB:老化のKeyオルガネラであるミトコンドリア機能異常と腎臓病との関連性の検討を進めている。 A. 糸球体細胞における腎臓発生のキー分子である転写因子Tcf21が、ヒト・小動物のネフローゼ症候群において腎臓糸球体組織で発現の亢進を認め、同時に尿中Tcf21濃度は高値であり正の相関が確認されている。また、治療反応時に蛋白尿が改善するに合わせて、発現が速やかに減少することも確認している。さらに、in vitro実験系としてマウス糸球体培養細胞への強制発現実験において、細胞骨格に作用し、また細胞死の抑制し細胞保護的に機能する可能性を見出している。ヒト・小動物においてin vivo、in vitroともに寄与が証明できている。この成果はScientific Reportsに掲載された。サブ解析として,commonなヒト糸球体腎炎(非ネフローゼ)であるIgA腎症でもネフローゼ症候群程ではないものの糸球体発現亢進と尿中Tcf21濃度との間に正の相関が確認され,現在論文を投稿中である. B. 変異ミトコンドリアDNA導入マウスでは、加齢に伴い糸球体障害、蛋白尿を呈することを確認できている。老化による糸球体硬化の疾患モデルとして確立できた。マウス腎臓組織の解析し、加齢に伴い腎臓での変異ミトコンドリアDNAの蓄積が起こり,変異率>90%を越えると糸球体硬化および糸球体性タンパク尿の出現がしていることを明らかにした。これらの成果を現在論文投稿中である。
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