研究実績の概要 |
ポドサイト病はポドサイトを標的として起きる一連の糸球体病変であり、実験的にはポドサイトを特異的に障害するモデルがその機序の解明には最も適している。本研究はポドサイト病の発症進展機序について、ポドサイト特異的障害するモデル(NEP25)を用いた。 1.ポドサイトの剥離機構の検討:ポドサイト障害が糸球体内に波及し、ポドサイトの剥離を進展する機構を、NEP25マウスの糸球体を経時的に電子顕微鏡で観察した。病変のある糸球体のうち、血管極と尿細管極両方を含むもの約80個を抽出し、剥離部、足突起消失部、正常部を色分けし、部位と長さ、連続性を調べた。結果)剥離は尿細管極部に起きる傾向があった。複数のポドサイトが集簇して剥離し、その背景にはポドサイトの障害によってできるsubpodocyte spaceがdriving forceとして重要であると考えられた。 2.ポドサイト障害に伴う壁細胞の変化と背景分子の検討:NEP25マウスの病変形成における、CD44,ケモカインCXCR4の発現と、そのリガンドであるmacrophage inhibitory factor (MIF), stromal cell-derived factor 1 (SDF-1)の発現について免疫組織化学的に検討した。さらに壁細胞株を用いてCD44阻害遊走アッセイを行った。結果)ポドサイト障害初期にはMIF, SDF-1はポドサイトに発現し、その後CD44 とCXCR4が壁細胞側に発現する。さらにin vitroの検討では、CD44をsiRNAで発現抑制した場合、TBF-betaで刺激しても遊走能が低下することが分かった。すなわち、障害ポドサイトに誘導されたMIF, SDF1が壁細胞でも発現しオートクライン機序でCD44、CXCR4と反応し、壁細胞が糸球体側に移動する可能性が示唆された。
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