研究実績の概要 |
本研究は、ポドサイト特異的障害するモデル(NEP25)の糸球体障害機序について、とくにポドサイトの剥離という、糸球体硬化には重要なステップが起きる機序について検討した。このモデルではポドサイトを均一に毒素で障害するが、糸球体病変の発生は部分的であり、障害とそのout putである糸球体硬化との因果関係が明らかにされていない。本年度の研究の結果として、1. ポドサイト剥離にはポドサイト足突起消失が必須である、2. ポドサイト剥離は糸球体のどの部位からでも起きうるが、進展すると尿細管極にその局在が移動する、3. 尿管結紮で糸球体濾過を停止すると、足突起消失は起きるが、剥離は全く起きない、4. 糸球体濾過量の増加により剥離は進行するが一定の局在は示さない。以上からポドサイト病の発症起点のひとつとして糸球体に内在する構造的因子と濾過というforceが機械的ストレスになりポドサイト剥離が起き、ひとつの糸球体内でも濾過量のheterogeneityが硬化病変が分節性である基盤となると考えられる。 同時に行っているポドサイト障害と壁側上皮細胞の反応については、同マウスモデルを用いて、ケモカインの発現などを検討した。その結果2. CD44,ケモカインCXCR4の発現と、そのリガンドであるmacrophage inhibitory factor (MIF), stromal cell-derived factor 1 (SDF-1)の発現は、障害ポドサイトにみられるが、その後に壁細胞にもde novoの発現を認める。また、in vitroの検討では、CD44を siRNAで発現抑制した場合、TBF-betaで刺激しても遊走能が低下することから、障害ポドサイトに誘導されたMIF, SDF1が壁細胞でも発現しオー トクライン機序でCD44、CXCR4と反応し、壁細胞が糸球体側に移動する可能性が示唆された。この背景にはポドサイトと壁細胞が別々に分化しているにもかかわらず、障害に対しては同様の因子を発現する可能性が考えられる。
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