平成29年度は研究計画に従って、様々なヒト腎疾患におけるアクチビン・フォリスタチン系の関与について検討を開始した。具体的には、事前に同意の得られた患者の腎生検標本を用いて、各種腎疾患におけるアクチビン、アクチビン受容体、フォリスタチンの発現および局在を免疫染色またはIn situ hybridizationにより評価した。糸球体足細胞(Synaptopodin、WT1)、メサンギウム細胞(Vimentin)、近位尿細管(Aquaporin1、LTL)、遠位尿細管(Tamm-Horsfall Protein)、集合管(Aquaporin 2、DBA)、血管内皮(CD31)、血管平滑筋(alpha-SMA)などの各種ネフロンマーカーとアクチビンの2重染色を行い、アクチビン産生細胞を同定した。また、Bリンパ球(CD19)、Tリンパ球(CD3)、好中球(Gr-1)、マクロファージ(CD68)などの炎症細胞がアクチビンを産生している可能性についても検討を行った。一連の検討には、腎腫瘍手術にて摘出された腎臓の残余検体(正常腎組織)を対照コントロールとして用いた。その結果、腎障害の際は、尿細管細胞や炎症細胞がアクチビンを産生することが判明している。 さらに、ヒト腎疾患における尿中アクチビン測定意義の検討を開始した。事前に同意の得られた腎疾患患者の尿をサンプリングし、分注して凍結保存した。尿中アクチビンの濃度をELISA法により測定し、検尿所見(蛋白尿、血尿、尿沈渣、尿中NAG、尿中beta2-microgloblin、尿中alpha1-microgloblin、尿中L-FABPなど)、腎組織障害の程度、腎機能(血清Cr、eGFR、クレアチニン・クリアランス)との相関の有無について検討中である。
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