研究計画に従い、ヒト腎疾患患者サンプルを用いて得られたデータのうち、特にアクチビンの関与が高いと予想される「急性腎障害」と「ループス腎炎」に焦点を絞って、疾患モデル動物を用いた実験・解析を行った。 急性腎障害モデルとして虚血・再灌流障害マウスを作成し、その発症・進展過程でアクチビンの発現増加の有無をreal-time PCR、免疫染色、In situ hybridization、ウェスタンブロットを用いて検証した。各種ネフロンマーカーと2重染色し、急性腎障害におけるアクチビン産生細胞を同定した。同時に上記モデルマウスの尿を経時的にサンプリングし、尿中アクチビン濃度をELISAにより測定した。腎機能、組織障害の程度、尿蛋白量との相関の有無を検証した。以上の結果、アクチビンは急性腎障害後、尿細管に発現することが判明し、さらに尿中アクチビンは急性腎障害の重症度や予後を予測する新たなバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。 ヒト腎生検標本を用いたアクチビン染色の結果、ループス腎炎でその発現が著明であった。そこで自然発症ループス腎炎モデルマウス(MRL-lprマウス)を用いて解析を行った。このマウスは12週齢より蛋白尿を認め、20週齢までに腎不全を発症する。このマウスの腎炎発症・進展過程におけるアクチビンの発現をreal-time PCR、免疫染色、In situ hybridization、ウェスタンブロットを用いて検証した。また、各種マーカー(糸球体、尿細管、線維芽細胞、炎症細胞、血管内皮など)との2重染色を行い、アクチビン産生細胞を同定した。その結果、MRL-lprマウスの腎臓では、浸潤したマクロファージがアクチビンを産生していることが判明し、腎症の悪化とともに尿中アクチビンが増加することが明らかになった。
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