研究実績の概要 |
[背景と目的]哺乳類の腎臓は、胎生期に尿管芽とCap mesenchymeならびに間質細胞の相互作用により構築される。Tcf21は bHLH転写因子に属し、Cap mesenchymeと間質細胞に発現する。Tcf21欠損マウスは腎臓の低形成を生じるが、一方でTcf21の機能は明らかでない。 [方法]従来型のTcf21 欠損マウス、Cap mesenchyme 特異的Tcf21 K欠損マウス(CapTcf21)、間質細胞特異的Tcf21 KO欠損(StrTcf21)マウスを作製し解析した。 [結果] マウス胎生12.5日の腎臓を摘出し、培養後に尿管芽の分岐数を計測すると、対照群48.8±3.0(平均±SE), Tcf21欠損群12.3±1.7個と有意な低下を認めた。Tcf21欠損マウスの腎臓mRNAでは尿管芽分岐に必須であるGdnf, Ret, Wnt11の発現が対照群に比較してそれぞれ0.16倍、0.44倍、0.24倍と有意に低下していた。CapTcf21マウスは糸球体の形成不全を来したが、Gdnf, Ret, Wnt11の発現は維持されていた。一方で、StrTcf21マウスでは髄質の強い低形成を認め、4週齢で尿量が変異群で有意に増加しており、尿濃縮力低下が見られた。Gdnf, Wnt11の発現も対照に比較してそれぞれ0.23倍、0.28倍と有意に低下し、尿管芽の分岐数も対照群60.9±3.4(平均±SE), StrTcf21群49.8±3.0と有意な減少を認めた。 [結語]胎生期の腎臓において、Cap mesenchymeに発現するTcf21は糸球体形成を、間質に発現するTcf21はGdnf経路を介して尿管芽の分岐を制御し腎臓発生に寄与することが明らかになった。
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