研究課題
転写因子Tcf21は腎臓、肺、心臓などの発生を制御する遺伝子であり、腎臓のポドサイトと線維芽細胞に発現している。本研究においては腎臓の線維化における転写因子Tcf21の機能を明らかにすることを通じて、慢性腎臓病の新規治療戦略に向けた基盤を構築することを目的とした。この目的のために、まず野生型マウスに片側尿管結紮を行い、腎線維化を惹起したところ、線維化部位において、Tcf21-LacZマウスのLacZ染色によって示されるTcf21プロモーター活性の増加が認められ、また、realtime PCR法においても、Tcf21発現が2-4倍に増加していた。同様に線維化をきたす葉酸負荷モデルにおいても、腎線維化に伴ってTcf21発現が増加することが判明した。さらに、Tcf21ノックアウトマウスは出生直後に死亡するため、Tcf21を出生後に欠損するマウスをCre-LoxPシステムによって作成し、このinducible Tcf21 KOマウスにUUOにて腎線維化を惹起した。すると、inducible Tcf21 KOマウスにおいてはUUOの際に増加する線維化マーカーが野生型と比較して抑制される傾向が認められた。以上より、腎臓の線維化はTcf21により促進される可能性が示唆された。また、腎臓の線維芽細胞において、Tcf21を欠損するマウスを作成すると、尿細管と間質の発生分化が著しく障害されることが判明した。このような知見から、Tcf21は発生期、出生後共に、腎臓の間質細胞において、組織分化と機能維持に重要な役割を果たしていると考えられた。
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