研究課題
平成29年度は、HIF活性化薬であるPHD阻害薬が2型糖尿病BTBR/obobマウスのアルブミン尿を減少させることを明らかにした。平成30年度には、非糖尿病性腎症モデルへの外挿可能性を検討した。平成31(令和元)年度には、アルブミン尿の減少をもたらす責任因子・分子機構の同定を行った。2型糖尿病BTBR/obobマウスより糸球体を単離してmRNAを抽出し、マイクロアレイによって網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、健常マウスと比較して2型糖尿病で発現が最も顕著に上昇し、HIF活性化によって最も強く打ち消された遺伝子の一つに、マクロファージ走化因子であるMCP-1が同定された。免疫組織化学的検討によって糸球体に浸潤するマクロファージが有意に抑制されていたことから、MCP-1の発現変動が病態修飾に寄与した可能性を考え、HIFによるMCP-1抑制機構の検討を加えた。培養メサンギウム細胞に対してパルミチン酸を負荷するとMCP-1の発現が誘導されるが、PHD阻害薬は本作用を抑制した。また、本影響はHIF-1αに対するsiRNAノックダウンによって打ち消されたことから、HIF-1を介する作用と考えられた。さらには、PHD阻害薬をマウス個体に投与するとアディポネクチンの産生が高まったことから、アディポネクチンがメサンギウムに与える影響も検討した。アディポネクチン受容体作動薬であるAdipoRonは用量依存性にAMPキナーゼを活性化し、パルミチン酸負荷によって誘導されるMCP-1発現誘導に拮抗した。一連の研究成果により、PHD阻害薬による薬理学的なHIFの活性化は、糸球体局所への直接作用やアディポネクチンを介する間接作用など、多面的な作用により炎症を抑制し、アルブミン尿減少に寄与したものと考えられた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件)
BMJ Open Diabetes Res Care.
巻: 8 ページ: -
10.1136/bmjdrc-2019-000902.
Kidney Int.
巻: 97 ページ: 687-701
10.1016/j.kint.2019.10.020.
J Am Soc Nephrol.
巻: 31 ページ: 560-577
10.1681/ASN.2019060582.
巻: 97 ページ: 248-250
10.1016/j.kint.2019.10.010.
Am J Physiol Renal Physiol.
巻: 318 ページ: F388-F401
10.1152/ajprenal.00419.2019.
巻: 318 ページ: F14-F24
10.1152/ajprenal.00323.2019.
Curr Opin Nephrol Hypertens.
巻: - ページ: 128-135
10.1097/MNH.0000000000000556.
巻: - ページ: -
10.1016/j.kint.2019.12.007.
Ann Transl Med.
巻: Suppl8 ページ: S334
10.21037/atm.2019.09.118.
Cell Rep.
巻: 29 ページ: 1261-1273
10.1016/j.celrep.2019.09.050.
Eur J Pharmacol.
巻: 859 ページ: -
10.1016/j.ejphar.2019.172532.
Contrib Nephrol.
巻: 198 ページ: 112-123
10.1159/000496531.
巻: 96 ページ: 129-138
10.1016/j.kint.2019.02.011.
Lab Invest.
巻: 99 ページ: 1217-1232
10.1038/s41374-019-0239-4.