研究課題
平成29年度は、Cbwd1の発現解析とノックアウトマウスの表現型解析を行った。(1)発現解析:抗Cbwd1抗体を用いて免疫染色を行ったところ、E13.5より尿管芽細胞の核内に発現することが分かった。生体マウス腎においても核内に発現しているがその細胞の種類は現時点では同定できていない。成人の腎切片を用いて行ったが明らかな染色は認められなかった。(2)ノックアウトマウス解析:CRISPR/Casを用いて作成したノックアウトマウスであり、オフターゲット効果の可能性を減らすために、Line AとLine Bの2種類のマウスを用いて解析を行った。a) 出生マウスの遺伝子型:CBWD1ノックアウトマウスが胎生致死であるか判断するために出生マウスの遺伝子型の頻度を確認した。ラインA;WILD TYPE(WT):HETERO:HOMO=9匹/51匹(18%):31/51(61%):11/51(22%)、ラインB;WT:HETERO:HOMO=26/106(25%):59/106(57%):21/106(20%)とラインA, B共に各遺伝子型の出生数に有意差を認めずメンデルの法則に従っていた。b) CBWD1ノックアウトマウスの腎表現型:マウスのCAKUTが認められる場合は、水腎症が主であった。重複尿管を示すものはラインAに1匹、ライン7に2匹認められた。CAKUTを認めたマウスの頻度を下に示す。ラインA;WT:HETERO:HOMO=0/13(0%):2/20(10%):3/5(60%)、ラインB;WT:HETERO:HOMO=0/42(0%):2/54(4%):10/34(29%)、とHOMOマウスで有意にCAKUTの出現頻度が高かった。
1: 当初の計画以上に進展している
平成29年度はノックアウトマウスの表現型解析を行うことを目標としていたため、その点では進捗通りと言える。しかし、水腎症や重複尿管と言った表現型を呈することを、数多くのマウスを解剖することで証明することができたことは、非常に大きな結果であった。解剖したマウスの数が十分であり1つの結果としてまとめられたこと、今後の研究を広げさせることができる契機となったことの2点において、当初の計画以上であると考える。
①遺伝子欠損部位の同定:CBWD1遺伝子のエクソン1が患者特異的に欠損していることはすでに証明しているが、その欠損部位の配列の同定には至っていない。ロングリードシークエンス法を用いて配列同定を行う。②Cbwd1の細胞内での役割の解明:Cbwd1と腎臓発生に重要な転写因子Gata3が生化学的に結合すること、尿管芽細胞核内に共発現することを見出している。Gata3がRetの遺伝子発現を制御していることが知られているので、Cbwd1がGata3と同様にRet遺伝子プロモーターに結合しているかChIPを行い解析する。またRetのプロモーターベクターを作成しルシフェラーゼアッセイを行い、Cbwd1のGata3活性への影響を調べる。
次年度使用額が生じたが、425円であった。これは比較的少額であると言えよう。ほぼ予定通りに研究費を使用することができたと考える。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
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