研究課題/領域番号 |
17K09690
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
細島 康宏 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (50464003)
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研究分担者 |
斎藤 亮彦 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (80293207)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メガリン / 糖尿病性腎症 / 肥満関連腎症 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
我々は、近位尿細管エンドサイトーシス受容体メガリンが腎毒性物質の「入り口」を司ることによって肥満・メタボリックシンドローム(MetS)や糖尿病性腎症といった病態を引き起こすと共に、尿中に排出されるメガリンが、それらの病態とリンクして、疾患の重症度を表すマーカーになる可能性を明らかにしてきた。本研究においては、尿中メガリンの排出動態を、動物実験も含めて確定すると共に、その臨床的意義を横断的かつ縦断的解析によって検証することを目的としている。 そこで、当院に通院中の2型糖尿病患者のコホートにおいて、尿中メガリン値の上位群の下位群に対する、糖尿病性腎症進展のリスクについてCox比例ハザードモデルを用いて解析した(平均観察期間 1449日)。アルブミン尿を認めない正常アルブミン尿の患者(eGFR 60ml/min以上)の64名の解析では、C-メガリン(全長型)高値の場合には微量アルブミン尿への進展リスクが、年齢、性別、HbA1cおよびeGFRで補正しても2.85倍(95% CI 1.30-6.24)であることが分かった。また、eGFR 60ml/min以上の126名において、A-メガリン(細胞外ドメイン型)高値の場合には、将来のeGFR 20%低下のリスクが、年齢、性別、HbA1cおよびeGFRで補正しても6.50倍 (95% CI 1.41-30.03)であることが明らかとなった。さらにこれらの結果は、他の尿中バイオマーカーで補正しても有意であったことから、尿中A-およびC-メガリンは既存のものとは異なる新規のバイオマーカーであることが示された。以上より、糖尿病性腎症患者において尿中メガリンを測定することにより、将来の腎症進展の予測することができる可能性が示唆され、国際腎臓学会シンポジウムであるISN Frontiers Meetingsで発表を行い、現在、論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つとして、糖尿病性腎症および肥満関連腎症患者の臨床データ(特にMetS関連要素)および腎生検病理組織像と尿中メガリンの動態についての関連性を解析することが挙げられる。そしてこれまでに、「腎生検データベースの構築」、「腎生検データベースを用いた腎疾患患者の腎機能および死亡に関する前方視的研究」、「腎生検施行症例の予後についての後方視的研究」の3つの研究を新潟大学倫理審査委員会に申請し、承認を受けている(承認番号:2017-0105、2017-0107、2017-0108)。これを踏まえ、既に予後調査を開始、継続しており、今後、腎移植ドナー患者も含め、調査結果や腎生検結果などを基にその関連性について尿中メガリンの動態も含め解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
MetS型糖尿病モデルである高脂肪食負荷マウスなどにおいて、腎障害の進行とリンクした尿中メガリンの動態の詳細は不明である。特に、A-メガリンの尿中排出機序は確定しておらず、このモデルを用いてその機序の解明が可能であると考えられる。そのために、マウス尿中メガリン測定系の開発を行う必要があるが、我々が以前から行ってきた、ヒト尿中メガリン測定用ELISAを構築した技能を利用し、マウス用のELISAの開発を行っている。そしてこれまでに、メガリンの細胞外ドメインであるLBD-Iに対する4つの既存の抗体を用い、1種類ずつマイクロプレートに固相化し、残りの3種類のHRP標識抗体で検出を行った。しかし、合計12種類の組み合わせを試みたものの、最も良い反応を示した組み合わせにおいても、定量範囲内での尿サンプルの測定に支障を認めた。よって、現在、感度および特異度向上のために、新規のLBD-Iに対するペプチド抗体を作製している。また、C-メガリン におけるマウス用のELSIAにおいても、ヒトのC-メガリンELISAと同様に化学発光系で検討中である。ELISA構築後には、高脂肪食負荷モデルマウスやOb/ObマウスなどのMetS型糖尿病モデル動物において、肥満関連腎症の病態の進行における尿中メガリンとの関連を明らかにし、細胞外ドメイン型メガリンの尿中排出機序の解明も含めた新たなそのバイオマーカーとしての意義を解析していく予定である。
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