我々は、腎臓の近位尿細管エンドサイトーシス受容体メガリンが腎毒性物質の「入り口」を司ることによって肥満・メタボリックシンドロームに関連した腎症や糖尿病性腎症といった病態を引き起こすと共に、尿中に排出されるメガリンが、それらの病態とリンクして、疾患の重症度を表すマーカーになる可能性を明らかにしてきた。本研究においては、尿中メガリンの排出動態を、動物実験も含めて確定すると共に、その臨床的意義を横断的かつ縦断的解析によって検証することを目的としていた。 抗ヒトメガリンマウスモノクロ―ナル抗体の中から、A-メガリン(細胞外ドメイン型)ELISAは細胞外ドメインを認識する抗体2種類、C-メガリン(全長型)ELISAは細胞内領域を認識する抗体2種類を選択し、様々な条件検討を経て、マウス尿中メガリン測定用の新規の化学発光系ELISA法を開発した。今後、メガリン研究への本技術の貢献が大いに期待される。 新潟大学医歯学総合病院に通院中の188名の2型糖尿病患者のコホートにおいて、ベースラインの尿中メガリン値で2群に分け、腎機能(eGFR)の変化量を目的変数として一般化推定モデルにて解析することにより、糖尿病性腎症進展のリスクについて検討した。4年間の経過において、A-メガリン高値群およびC-メガリン高値群は、いずれもその低値群に比して、その後のeGFR低下速度が有意に増大していた。また、A-メガリン高値かつC-メガリン高値群においては、対照群に比してさらにその低下速度が増大していた。これらの結果は、他の尿中バイオマーカーで調整しても有意であったことから、尿中A-およびC-メガリンは既存のものとは異なる新規のバイオマーカーであることが示された。以上より、糖尿病性腎症患者において尿中メガリンを測定することにより、将来の腎症進展の予測することができる可能性が示唆され、現在、論文投稿準備中である。
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