研究課題
線維化は臓器障害に対する過度の創傷治癒反応、すなわち細胞外基質沈着と細胞外基質産生能を有する細胞の集積を特徴とする。しかし、これら過度の創傷治癒反応をもたらす分子生物学的基盤は完全には同定されていない。細胞外基質産生能を有する細胞群の中で,線維芽細胞および筋線維芽細胞は線維化組織におけるコラーゲン沈着領域に集積し,線維化進展機序における主たる役割を担う細胞と考えられている。本研究では、アクチン細胞骨格により制御される転写因子myocardin-related transcription factor (MRTF)ファミリー(MRTF-A、MRTF-B)が、線維芽細胞および筋線維芽細胞の生物学的特性を調節することで腎線維化にはたす意義の解明を試みている。平成29年度は、細胞特異的MRTF遺伝子改変マウス(標的細胞;コラーゲン産生細胞,糸球体上皮細胞)を作成すべく、マウスの交配を継続して行った。すなわち、コラーゲン産生細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,コラーゲン産生細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.さらに、糸球体上皮細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,糸球体上皮細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.現在、このマウスに各種腎障害モデルを作成し、腎障害にはたすMRTFの意義を検討しているところである。
2: おおむね順調に進展している
コラーゲン産生細胞および糸球体上皮細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成することに成功した。すなわち、コラーゲン産生細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,コラーゲン産生細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.さらに、糸球体上皮細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,糸球体上皮細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.このマウスに各種腎障害モデルを作成し、現在までに腎障害にはたすMRTFの意義を見出しているところである。
上記検討に並行しながら、上記遺伝子改変マウスを用いて慢性腎不全モデルを作成し、細胞特異的なMRTFシグナルが各種腎障害に与える影響を明らかにする。その上で腎固有細胞や浸潤細胞を採取し、収縮能、遊走能、浸潤能、形質転換や遺伝子発現といった生物学的特性を調節するMRTFシグナル依存性機序および関連分子を検討する。
すべて 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 5392
10.1038/s41598-017-05624-2