研究課題
線維化は臓器障害に対する過度の創傷治癒反応、すなわち細胞外基質沈着と細胞外基質産生能を有する細胞の集積を特徴とする。しかし、これら過度の創傷治癒反応をもたらす分子生物学的基盤は完全には同定されていない。細胞外基質産生能を有する細胞群の中で,線維芽細胞および筋線維芽細胞は線維化組織におけるコラーゲン沈着領域に集積し,線維化進展機序における主たる役割を担う細胞と考えられている。本研究では、アクチン細胞骨格により制御される転写因子myocardin-related transcription factor (MRTF)ファミリー(MRTF-A、MRTF-B)が、線維芽細胞および筋線維芽細胞の生物学的特性を調節することで腎線維化にはたす意義の解明を試みている。平成30年度は、平成29年度に引き続き細胞特異的MRTF遺伝子改変マウス(標的細胞;コラーゲン産生細胞,糸球体上皮細胞)を作成した.すなわち、コラーゲン産生細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,コラーゲン産生細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.さらに、糸球体上皮細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,糸球体上皮細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.平成29年度に見られた繁殖遅滞は平成30年度には改善し、安定したマウスの供給が可能となった。これらマウスを用いて各種腎障害モデルを作成し、腎障害にはたすMRTFの意義につき、引き続き検討している。さらに細胞培養実験において、MRTFの腎障害にはたす機序につき、より詳細な検討を開始した。現在、MRTFに制御を受ける候補因子を同定し、線維化との関連を検討している。
2: おおむね順調に進展している
コラーゲン産生細胞および糸球体上皮細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成することに成功した。すなわち、コラーゲン産生細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,コラーゲン産生細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.さらに、糸球体上皮細胞特異的にCreを発現するマウスをMRTFAB-loxPと交配することで,糸球体上皮細胞特異的なMRTF欠損マウスを作成した.このマウスに各種腎障害モデルを作成し、腎障害にはたすMRTFの意義を見出した。さらに遺伝子改変細胞も作成し、MRTFの腎障害にはたす意義を検討開始している。現在、MRTFに制御を受ける候補因子を同定し、線維化との関連を検討している。
上記検討に並行しながら、動物および細胞実験において、MRTFの腎障害にはたす意義を明確にしたい。さらに、MRTFに制御を受ける因子を絞り込み、新たな治療標的としての意義を検討したい。そのうえで、ヒト腎疾患におけるMRTFの意義についても検討を進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)
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