研究課題
(背景)線維化は臓器障害に対する過度の創傷治癒反応、すなわち細胞外基質沈着と細胞外基質産生能を有する細胞の集積を特徴とする。細胞外基質産生能を有する線維芽細胞は線維化進展機序における主たる役割を担う細胞と考えられている。本研究では、アクチン細胞骨格により制御される転写因子myocardin-related transcription factor (MRTF)-Aが、線維芽細胞機能を調節することで腎線維化にはたす意義の解明を試みた。(方法)MRTF-A欠損マウス(MRTF-A-/-)および対照マウス(MRTF-A+/+)を用いて、一側尿管結紮(UUO)により腎線維化モデルを作成した。腎内ハイドロキシプロリン量を測定することで腎線維化を定量評価し、免疫組織染色にてa-smooth muscle actin(aSMA)陽性細胞を評価した。マウス腎線維芽細胞(RFB)およびマウス尿細管上皮細胞(TEC)にtransforming growth factor (TGF)-b 1刺激を行い、MRTFファミリーのCTGFやaSMA発現にはたす意義を検討した。(結果)UUOによりMRTF-A-/-,MRTF-A+/+共に腎内ハイドロキシプロリン量およびaSMA陽性細胞数は増加した。MRTF-A-/-ではMRTF-A+/+と比較して腎内ハイドロキシプロリン量およびaSMA陽性細胞数は低下した。RFBやTECではTGF-b1刺激によりMRTF活性が亢進した。またTGF-b1刺激により、RFBにおけるCTGFやaSMA発現、TECにおけるCTGF発現が亢進した。MRTFファミリーを標的としたsiRNA処理により、RFBにおけるCTGFやaSMA発現、TECにおけるCTGF発現はいずれも抑制された。(考察)本研究により、MRTFファミリーは腎線維化進展機序に関与することが示唆された。
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