研究課題
2010年われわれはIgM陽性形質細胞 (Plasma Cell: PC) が浸潤している尿細管間質性腎炎 (tubulointerstitial nephritis: TIN) の世界「初」症例を、Clinical Nephrologyに報告した。この症例から得られた知見をもとに、全国7施設と共同研究を展開し、13例の症例集積から、2017年IgMPC-TINの臨床・病理学的特徴をJ Am Soc Nephrol誌に報告した。その臨床的特徴は、100%に遠位型尿細管性アシドーシス、92%に尿糖、82%に抗ミトコンドリア抗体陽性、46%に原発性胆汁性胆管炎 (PBC) の合併であった。また、組織学的特徴は、IgMPCの間質への著明な浸潤像と近位尿細管や集合管におけるCD3陽性Tリンパ球による尿細管炎であった。IgMPC-TINの頻度は、全腎生検中0.06%と多くはないが、われわれの施設では0.7%と10倍以上の頻度であり、見逃されてきた可能性が高い。この原因として通常の蛍光抗体法のIgM染色では診断が難しい点、また、診断基準が存在しない点などが挙げられる。次の課題として、われわれは、未診断のIgMPC-TIN患者の発掘のために、感度・特異度に優れたIgMPC-TINの診断基準の確立を目指し、新たに20施設以上が参加する多施設共同研究をスタートさせた。現時点での検討では、ROC解析から顕微鏡400倍視野中に13個以上のIgM陽性PCが必要で (感度100%特異度93.2%)、血中IgMも262 mg/dL (感度100%特異度100%) 以上が必要条件であった。各施設の倫理申請が終了し、送付されたサンプルから順に免疫染色を行い、更なる精度の高い診断基準のパラメーターを検討している。
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