研究課題/領域番号 |
17K09693
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
大橋 温 浜松医科大学, 医学部附属病院, 特任講師 (50397387)
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研究分担者 |
加藤 明彦 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (60324357)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腎臓内レニン-アンジオテンシン系 / アンジオテンシノーゲン / 糸球体過剰濾過 / in vivo imaging |
研究実績の概要 |
申請者は、腎臓内レニン-アンジオテンシン系(RAS)の活性化が腎臓障害や高血圧に関与するのみならず、腎臓内RASの日内変動異常が、血圧の日内変動異常や腎臓障害に関与することを明らかとしてきたが、腎臓内RASの日内変動が生じる機序は不明であった。 そこで、腎臓内RAS活性の日内変動のメカニズムが、糸球体高血圧に依存した糸球体からのアンジオテンシノーゲン(AGT)の濾過のレベルに依存すると仮説を立て、慢性進行性の腎障害モデルでin vivo imagingを用いて視覚的に明らかにすることを主目的として実験を行っている。 平成29年度は、当院で確立していなかった多光子顕微鏡を用いてのin vivo imagingによる可視化した糸球体の観察に注力している。具体的には、Wistar ratにイソフルランを用いて安定した麻酔深度を確保したうえで、頸静脈からカニューレーションを行った後、左腎臓を背部切開により露出した後、腎臓表面を薄くスライスすることによって、糸球体を表面から観察しやすくする手技を確立した。更にはその後、FITICラベルした500kDaデキストランを静注し、糸球体観察を行うことも確立した。 また同時併行で、糸球体濾過の状態を観察することが容易で、慢性進行性の腎臓障害を生じるモデルの作成に尽力している。当初は、今まで我々が行ってきた5/6腎摘モデルでその検討を行ったが、腎臓の部分摘出により生じる周囲との癒着が強く、癒着を剥ぐ処置などにより糸球体が虚血に陥るため、観察には不向きであることが判明した。現在、大量タンパク尿を呈し、慢性進行性の腎臓障害をきたすアドリアマイシン腎症を用いたモデル作成を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多光子顕微鏡を用いてのin vivo imagingの実験は、当教室では全く初めての試みであったため、当初は非常に苦労し、時間を要した。 しかし、学内外からの御助言や御指導を通じて、手技や留意点が分かってき始めたため、最近では徐々に順調に実験が進みつつある。 モデル動物については、当初は当教室でやりなれており、腎臓内RAS活性が亢進していることが明らかであることから、5/6腎摘モデルを使用した。しかし、腎臓の周囲との癒着の問題などのために、糸球体を虚脱などの変化をきたすことなく、in vivo imagingで検討することは困難であると判断した。この決断までにそれなりの時間を要した。 現在は、腎臓摘出モデルではなく、大量のタンパク尿をきたし、腎臓内RAS活性亢進が知られるアドリアマイシン腎症へとモデルを変更している。現在、適度な腎臓内RAS活性亢進をきたすアドリアマイシンの投与量や投与タイミングを検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針としては、まずは適切なレベルの腎臓内RAS活性を有するアドリアマイシン腎症の確立を急務として進めている。 その後は、確立したアドリアマイシン腎症ラットモデルを使用して、糸球体濾過を抑制するRAS抑制薬(オルメサルタン)と、全身血圧のみに影響する降圧剤(ヒドララジン)を用いて、コントロール群(C群)、アドリアマイシン群(AD群)、AD群にオルメサルタンを投与する群(AD+O群)、AD群にヒドララジンを加える群(AD+H群)を作成する。 そのうえで、FITCラベルをしたデキストランを静注し、糸球体腫大や輸出細動脈に対する輸入細動脈径の比率から糸球体濾過圧を評価する。そして、その際のAtto 565ラベルしたヒトアンジオテンシノーゲン(AGT)を静注し、Bowman嚢腔への漏れ出し方を評価することで、AGTの漏れ出し方が、糸球体濾過圧に依存しているかどうかを検討する。 更には、C群、AD群、AD+O群、AD+H群の4群を24時間、6時間毎に血圧、尿蛋白排泄、糸球体腫大や輸出細動脈に対する輸入細動脈径の比率やBowman嚢腔へのAGT漏れ出し方を評価することで、糸球体濾過圧の亢進によるAGTの漏れ出しが、腎臓障害や血圧上昇や血圧の日内変動異常に寄与するかを明らかにする予定でいる。
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