研究課題
糖尿病性腎症は、わが国における末期腎不全の最大の原因疾患であり、糖尿病性腎症の成因を解明して新しい治療手段を開発することは喫緊の課題である。我々は一連の研究によって、糖尿病性腎症の成因に軽微な慢性炎症(microinflammation)が関与することを明らかにしてきたが、近年、この機序にインフラマソームの活性化に伴う自然炎症の関与が示唆されている。本研究課題は、糖尿病性腎症の成因におけるインフラマソームの役割を明らかにして創薬のシーズを得るとともに、これに基づいてインフラマソームを標的とした腎症の新しい治療薬の開発を目的としている。昨年度実施した複数の糖尿病モデルマウスを用いた検討において、糖尿病モデルマウスでは非糖尿病マウスに比較してインフラマソーム関連遺伝子の発現が増加し、特にKK-Ayマウスではその増加が顕著であることが明らかになった。本年度はKK-AyマウスにP2X受容体阻害薬(Suramin)を投与し、腎臓におけるインフラマソーム抑制効果および腎組織障害の抑制効果を検証した。KK-AyマウスへのSuramin投与により、尿中アルブミン排泄率および腎組織障害が有意に抑制された。また、Suraminの投与によって、KK-Ayマウスの腎臓におけるインフラマソーム関連遺伝子・蛋白の発現が抑制された。以上の検討により、Suraminはインフラマソームを制御し、糖尿病性腎症の進展を抑制することが明らかになった。インフラマソームを制御する治療は糖尿病性腎症の治療標的となりうることが示された。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度に実施した、糖尿病マウスの腎組織におけるインフラマソーム関連分子の発現に関する検討結果に基いて、本年度はインフラマソームをターゲットとした糖尿病性腎症に対する新しい治療薬の開発に関連した研究計画を実施した。全体的には、おおむね順調に進展している。
引き続き、インフラマソームをターゲットとした糖尿病性腎症に対する新しい治療薬の開発を継続すると共に、P2X7ノックアウトマウスを用いたインフラマソームの機能解析を行う予定である。
ノックアウトマウスを用いた検討の一部を平成31年度に行うこととし、インフラマソームをターゲットとした糖尿病性腎症に対する新しい治療薬の開発に関する検討を重点的に行った。このため次年度使用額が生じた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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