研究課題
糖尿病性腎症は、わが国における末期腎不全の最大の原因疾患であり、糖尿病性腎症の成因を解明して新しい治療手段を開発することは喫緊の課題である。我々は一連の研究によって、糖尿病性腎症の成因に軽微な慢性炎症(microinflammation)が関与することを明らかにしてきたが、近年、この機序にインフラマソームの活性化に伴う自然炎症の関与が示唆されている。本研究課題は、糖尿病性腎症の成因におけるインフラマソームの役割を明らかにして創薬のシーズを得るとともに、これに基づいてインフラマソームを標的とした腎症の新しい治療薬の開発を目的としている。2017年度には、糖尿病モデルマウス(KK-Ayマウス)では非糖尿病マウスに比較してインフラマソーム関連遺伝子の発現が顕著に増加することを確認し、2018年度はKK-AyマウスにP2X受容体阻害薬を投与し、腎組織障害が有意に抑制されることを確認した。2019年度には更に詳細な解析を行い、P2X受容体の一部のサブタイプの発現がKK-Ayマウスの腎組織で増加し、P2X受容体阻害薬によって抑制されることが明らかになった。また、細胞実験による検討において、マウスメサンギウム細胞にdanger-associated molecular patterns(DAMPs)を添加したところ、インフラマソームの発現が増加し、P2X受容体阻害薬の投与によって抑制されることが明らかになった。以上の検討により、P2X受容体阻害薬はインフラマソームを制御することで糖尿病性腎症の治療標的となりうることが示唆された。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件)
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