研究課題/領域番号 |
17K09700
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
冨永 辰也 徳島大学, 医歯薬学研究部, 准教授 (80425446)
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研究分担者 |
安部 秀斉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 准教授 (60399342)
長井 幸二郎 徳島大学, 病院, 講師 (40542048)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / ポドサイト障害 / BMP4 |
研究実績の概要 |
組織特異的BMP4変異マウスの作製と病態解析は順調に進んでいる。ポドサイト特異的、メサンギウム特異的、血管内皮特異的マウスの作製に成功した。ポドサイト特異的BMP4発現マウスは、35週齢マウスで糸球体病変を認めた。ポドサイトにBMP4を強制発現させたマウスは、ポドサイトフットプロセスの崩壊を引き起こし、タンパク尿の漏出と細胞外基質タンパクの発現増加を誘導した。メサンギウム特異的マウスと血管内皮特異的マウスについては経過観察中である。 一方で、糖尿病マウスにおいて、サイトカインプロセシング酵素Furin及びPACE4の発現が腎臓内に増加していることを確認した。この酵素の発現パターンは、BMP4の発現部位と一部一致していた。BMP4は糖尿病性腎症で起こる糸球体硬化症を進展させる為、Furin及びPACE4の機能解析を進め病態進展を抑えることを目的に検討を行った。サイトカインプロセシング酵素の抑制分子を用いた、細胞実験と動物実験を行った。糖尿病条件下で培養したマウスメサンギウム細胞に抑制分子を添加すると前駆型BMP4の分裂が抑えられ、活性型BMP4の発現量が低下した。ポドサイト障害を引き起こすLPS刺激条件下で培養したポドサイト細胞に抑制分子を添加すると前駆型BMP4の分裂が抑えられ、活性型BMP4の発現量が低下した。細胞実験レベルでは、サイトカインプロセシング酵素抑制分子が、メサンギウム細胞及びポドサイト細胞において活性型BMP4の発現を抑えることを確認した。現在、動物実験にて糖尿病条件下とポドサイト障害モデルを用いて抑制分子の効果検証を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画では、BMP4遺伝子改変マウスを作製し、発現細胞が異なる状態でのBMP4の作用機序を解析を計画していた。当初の計画通り、ポドサイト特異的、メサンギウム特異的、血管内皮特異的誘導マウスを作製することができ、おおむね研究計画を達成している。 また、糖尿病マウスにおけるサイトカインプロセシング酵素の発現状態の解析を計画していた。腎臓内におけるサイトカインプロセシング酵素の局在を確認できたことは意義深く、腎臓内でこの酵素活性を抑えることを目的に、治療効果検証段階に入れたことより、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度からの研究計画は、引き続きBMP4遺伝子改変マウスの病態解析を行い、誘導細胞が異なることで病態に差異が生じるか分析する。糖尿病性腎症に類似した表現系が得られており、BMP4に関連する分子をマイクロアレイ解析で抽出し、創薬候補となる化合物を探索する。 サイトカインプロセシング酵素のうちFurin、PACE4をターゲットにした阻害物質を用いて、糖尿病マウスでの治療効果検証を行う。特定の阻害化合物は入手済みであり、細胞実験では活性型BMP4の分泌を抑える結果を得ている。これらの阻害化合物の有効性、毒性試験、分子メカニズムを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の実験において検体凍結保存スペースの確保が難しくなり、凍結保存用冷凍庫の購入を検討しており翌年度分として請求する。
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