研究課題/領域番号 |
17K09701
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鳥巣 久美子 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20448434)
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研究分担者 |
鶴屋 和彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20372740)
升谷 耕介 福岡大学, 医学部, 准教授 (30419593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Arginase 2 / 急性腎障害 / ニトロ化ストレス |
研究実績の概要 |
アルギナーゼは一酸化窒素合成酵素(NOS)の基質であるL-アルギニンを分解する酵素である。アルギナーゼ2(Arg2)は心血管疾患において病的に活性化し病態進展に関わるが、発現が最も高い腎臓での重要性はわかっていない。まず腎臓において、レーザーマイクロダイセクションによるmRNA解析により、尿細管、集合管、糸球体の順にArg2 mRNAが発現することを確認した。ヒト尿細管細胞 (HK-2)において、Arg2は斑点状に局在し、一部はミトコンドリアと共局在し、既報によるミトコンドリアアルギナーゼとしての機能を予想させる結果だった。次にArg2の発現が高い尿細管細胞に虚血再灌流を行い、Arg2の発現変化を調べた。マウスの腎虚血再灌流48時間後にArg2 mRNAとArg2蛋白ともに発現量が増加した。Arg2免疫染色においては、特に皮髄境界の尿細管にArg2が高く発現していた。HK-2を虚血再酸素化した場合もArg2の発現量は約2倍に増加し、ニトロ化ストレスを代表する3-ニトロチロシンは2倍以上に増加していた。HK-2細胞においてArg2を約20%以下にノックダウンし、アルギナーゼ活性も十分に確認できた状態で、虚血再酸素化を行った。虚血再酸素化後のミトコンドリア膜電位の低下はArg2 siRNA細胞において有意ではないが回復する傾向であった。3-ニトロチロシンはArg2 siRNA細胞で有意に減少していた。尿細管細胞でのNO産生に重要なeNOSとiNOSの発現量はArg2 siRNA細胞とコントロール細胞で差はなかった。Arg2 siRNA細胞ではArg2の発現低下により、虚血再酸素化下でも一酸化窒素(NO)の産生が維持され、NOS uncouplingが避けられた可能性があった。今後はArg2ノックアウトマウスを用いた腎虚血再灌流モデルを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト尿細管細胞の解析に加え、Arg2ノックアウトマウスの解析を開始できており、腎虚血再灌流モデルによる腎障害の結果も得られつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
Arg2ノックアウトマウスの腎虚血再灌流モデルを作成し、急性腎障害におけるArg2の重要性を明らかにしていく。Arg2の発現量が高かった尿細管細胞におけるArg2の役割を解析しているが、マウス腎障害の解析結果によっては、血管内皮細胞やマクロファージでのArg2の役割についてもin vitro, in vivoの両面から解析を進める予定である。
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