研究課題/領域番号 |
17K09702
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中山 裕史 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (00363531)
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研究分担者 |
向山 政志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40270558)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アンモニアトランスポーター / Rhcg / ユビキチンプロテアソーム / 糖尿病性腎症 / 代謝性アシドーシス |
研究実績の概要 |
本研究では、代謝性アシドーシスにおけるアンモニアトランスポーター(Rhcg:Rh family C glycoprotein)およびユビキチンプロテアソーム系(UPS)の糖尿病性腎症進展への関連を明らかにし、糖尿病性腎症および代謝性アシドーシスへの新たな治療標的としての可能性を検討することを目的としている。また糖尿病性腎症に対する治療としてはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAS)阻害薬が中心であるが、RAS阻害による代謝性アシドーシス及び高カリウム血症を早期に合併するため十分に治療が行えない症例が多いため、RASを介さない新規の代謝性アシドーシスの新たな治療法を見出すことで、新たな糖尿病性腎症の治療法を検討し、さらに代謝性アシドーシス治療を介した慢性腎臓病(CKD)全般における腎不全進行抑制法を見出すことも目的としている。 【研究結果概要】KK-Ay/Tajcl(KKAy)マウスにNH4Cl飲水による酸負荷を20週間施し、BALB/c(BALB)マウスを対照として、尿中酸排泄能を評価した。腎組織内の障害マーカーの発現、および血圧を測定した。【成績】尿中アンモニウム排泄量、滴定酸排泄量はいずれも腎機能と正の相関を示した。KKAyはBALBに比べ、酸負荷により尿中アンモニウム排泄量、滴定酸排泄量ともに有意に増加した。しかし酸負荷18週後にはBALBが酸排泄量を維持したのに対し、KKAyでは減少に転じた。酸負荷KKAyでは酸負荷BALBと比較して、腎組織におけるNGAL mRNAが有意に増加した。血圧に対する酸負荷の明らかな影響は認めなかった。Rhcg発現量には有意な変化は認めなかったが、ユビキチンの発現は増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖尿病性腎症モデルにおいて酸負荷を行うと、コントロールモデルと比較して次第に酸排泄能が低下することが証明された。さらに今回、ヒト肥満CKD患者の尿中酸排泄能を評価し、腎障害と血圧に及ぼす影響について検討しており、肥満群で非肥満群に比しアンモニウム排泄量は有意に少ないことが明らかとなった。このことから肥満CKDは、CKD早期の酸排泄能の低下から潜在的な代謝性アシドーシスを生じ、腎障害を増悪させる新たな可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
(CKDにおける尿細管細胞内UPS活性化の意義の検討) UPSの活性化が腎組織障害に与える影響を検討する。KK-Ay/TaJclマウスでUPSをプロテアソーム阻害薬で阻害し、糖尿病性腎症の進行を非投与群と比較する。プロテアソーム阻害薬の酸排泄能に対する影響も同モデルで検討する。プロテアソーム阻害薬による腎保護効果が認められた場合は、抗アルドステロン薬との併用による相加・相乗効果の有無を検討する。
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