研究課題
本研究は、AKI to CKDマウスモデルを用いてTLR4シグナルあるいはその内因性リガンドがAKI修復過程に果たす役割を検討することを目的としており、平成29年度目標として、AKI to CKDマウスモデルの最適化、およびCKD移行過程におけるTLR4内因性リガンドの検討、を掲げている。AKI to CKDマウスモデルとしては片側腎虚血マウスを用い、37℃下で25分間の腎動脈クランプによる虚血再灌流障害から3週間経過後の障害側腎について検討した。障害側腎は非障害側腎と比較して萎縮しており、mRNAを用いた検討では、腎障害マーカー(KIM-1、NGAL)上昇、炎症マーカー(TNFα、IL-1β)上昇、線維化マーカー(TGFβ、αSMA)上昇を認め、TLR4内因性リガンド(MRP8)の増加を伴っていた。MRP8が腎組織局所の慢性炎症に与える影響を検討するために、RAW 264.7細胞を用いてLPSおよびリコンビナントMRP8の添加実験を行った結果、炎症マーカー(TNFα、IL-1β)の上昇を認めた。以上よりAKIからCKDへの移行過程に、MRP8による炎症が関与していることが示唆された。今後は、MRP8の主な産生細胞である骨髄細胞特異的MRP8KOマウスを用いて、AKI to CKDの過程におけるMRP8およびマクロファージの役割を検討していく予定である。
3: やや遅れている
AKI to CKDモデルとして片側腎虚血再灌流障害(IRI)を作成し、本モデルにおける自然炎症の解析を行い、In vitroではマクロファージに対する内因性リガンドMRP8とLPSの相乗効果について検討した。ただし、骨髄細胞特異的MRP8KOマウスでの検討の開始が遅れており、次年度実施予定である。
平成30年度以降は、臓器特異的MRP8 KOマウスなどを用いて、AKIからCKDへの移行過程におけるMRP8およびマクロファージの役割を検討していく予定である。IRIの様な炎症性変化に対する細胞の反応は極めてダイナミックかつ複雑であるため、免疫組織学的解析やフローサイトメトリーといった従来の方法では、免疫反応におけるバランスを捕えることは難しい。そこで二光子励起顕微鏡を用いてMRP8 が浸潤炎症細胞に与える影響を生きたままの腎臓で可視化することにより、生体レベルでの意義を明らかにする計画である。
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Renal Replacement Therapy
巻: 3: 53 ページ: 1
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