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2017 年度 実施状況報告書

セリンプロテアーゼによる糸球体障害の分子機序解明ならびに新規CKD治療法への応用

研究課題

研究課題/領域番号 17K09705
研究機関熊本大学

研究代表者

柿添 豊  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 研究員 (70583037)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードセリンプロテアーゼ / プラスミン / 糸球体障害 / ポドサイト
研究実績の概要

メタボリックシンドローム(Mets)ラット(SHR/ND mcr-cp)に食塩を負荷し、4週間観察した。4週後には著明な蛋白尿を呈する糸球体障害を認めた。セリンプロテアーゼ特異的DLFザイモグラフィーで尿中のセリンプロテアーゼを評価すると、約80kDa付近に著明に活性が亢進したセリンプロテアーゼを認めた。分子量、および基質への反応性、これまでの検討結果よりこのセリンプロテアーゼがプラスミンである可能性が高いと考え、抗プラスミノーゲン抗体を用いたWBを行い、このプロテアーゼがプラスミンであることを同定した。近年、糸球体から漏出した血液中のプラスミノーゲンが糸球体上皮細胞podocyte表面でウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)によりプラスミンへ活性化され、プラスミンが酸化ストレス等を介してpodocyte障害を誘導することがin vitroの実験で報告されたため、in vivoにおいてもプラスミンが糸球体障害を誘導しているかについて検討した。
食塩負荷早期の明らかな腎障害が生じる前のプラスミン活性を評価した。実験にはSHR/ND mcr-cpと同様に代謝異常・食塩感受性高血圧を呈するDahl食塩感受性高血圧ラット(DSラット)を用いた。食塩負荷1週の時点では、糸球体過剰ろ過を反映しクレアチニンクリアランスの上昇(糸球体血行動態の変化)と尿中へのアルブミン排泄、尿プラスミン活性の亢進を認めた。腎(whole kidney)抽出蛋白を用いたザイモグラフィーではプラスミンの活性化は認めなかった。合成セリンプロテアーゼ阻害薬を投与すると、クレアチニンクリアランスには変化を認めなかったが、尿中プラスミン活性の抑制と、尿中アルブミン排泄の低下を認めた。このことから生体においても糸球体障害にプラスミンの活性化が関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では各種腎疾患において糸球体障害を誘導するセリンプロテアーゼの同定と治療応用の可能性を検討している。現時点で候補セリンプロテアーゼとしてプラスミンを検出しており、プラスミン活性抑制が糸球体障害(アルブミン尿)を軽減するという知見を得ている。当初はプロテアーゼの活性化のカスケードの検索を行う予定であったが、プラスミン活性抑制による治療効果を先に検討した。

今後の研究の推進方策

次年度は生体におけるプラスミン活性化の機序を明らかにする。in vitroの検討ではプラスミンが糸球体上皮細胞ポドサイト表面で活性化されることが報告されている。in vivoで糸球体内のプラスミンの活性化部位を明らかにするため、プラスミンの免疫染色を行い、プラスミンとポドサイトの相互作用を確認する。ポドサイト表面へのプラスミンの存在が確認できたら、uPAやtPA等のプラスミン活性化因子の免疫染色を行いプラスミンの活性化カスケードを明らかにする。カスケード上流のプロテアーゼが治療標的となる可能性を検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Sirtuin 7 Deficiency Ameliorates Cisplatin-induced Acute Kidney Injury Through Regulation of the Inflammatory Response.2018

    • 著者名/発表者名
      Miyasato Y, Yoshizawa T, Sato Y, Nakagawa T, Miyasato Y, Kakizoe Y, Kuwabara T, Adachi M, Ianni A, Braun T, Komohara Y, Mukoyama M, Yamagata K
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 8 ページ: 5927

    • DOI

      10.1038/s41598-018-24257-7.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TSS-Seq analysis of low pH-induced gene expression in intercalated cells in the renal collecting duct.2017

    • 著者名/発表者名
      Izumi Y, Inoue H, Nakayama Y, Eguchi K, Yasuoka Y, Matsuo N, Nonoguchi H, Kakizoe Y, Kuwabara T, Mukoyama M.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 12 ページ: e0184185.

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0184185.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The effect of serine protease inhibition on glomerular injuries in salt-sensitive hypertension2017

    • 著者名/発表者名
      Yasunobu Iwata, Yutaka Kakizoe, Terumasa Nakagawa, Yuichiro Izumi, Takashige Kuwabara, Masataka Adachi, Kenichiro Kitamura and Masashi Mukoyama
    • 学会等名
      アメリカ腎臓学会 Renal Week 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] 食塩感受性高血圧における糸球体障害へのセリンプロテアーゼ阻害薬の効果の検討2017

    • 著者名/発表者名
      岩田康伸 中川輝政 柿添豊 泉裕一郎 桒原孝成 安達政隆 向山政志
    • 学会等名
      第60回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] The role of serine proteases on glomerular injuries in salt-sensitive hypertension2017

    • 著者名/発表者名
      Yasunobu Iwata, Yutaka Kakizoe, Terumasa Nakagawa, Yuichiro Izumi, Takashige Kuwabara, Masataka Adachi, Kenichiro Kitamura and Masashi Mukoyama
    • 学会等名
      ISN (International Society of Nephrology) Frontiers Meetings 2018
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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