研究課題
2017年度の研究において食塩負荷メタボリックシンドローム(Mets)ラット(SHR/ND mcr-cp)は著明な蛋白尿、糸球体障害(組織学的に巣状分節性の糸球体硬化)を呈し、尿中のプラスミン活性が亢進していることを確認した。近年、プラスミンが酸化ストレス等を介してpodocyte障害を誘導することが報告されたため、抗プラスミン作用をもつ合成セリンプロテアーゼ阻害薬メシル酸カモスタットを投与すると、プラスミン活性抑制、蛋白尿・糸球体障害の軽減を認めた。カモスタットは食塩負荷により亢進した酸化ストレス、糸球体内アポトーシス細胞の増加を有意に抑制した。カモスタットは糖代謝には影響を及ぼさなかった。またDahl食塩感受性高血圧ラット(DSラット)においてもカモスタットは食塩負荷早期の糸球体障害を抑制することを確認している。これまで腎(whole kidney)抽出蛋白や尿中のプラスミン活性化を確認していたが、2018年度は腎組織を用いた免疫染色を行い、糸球体表面にプラスミンが存在していること、カモスタットはこの変化を抑制することを確認した。一方で、カモスタットはDSラットの食塩負荷1-2日目の尿中プラスミン活性化を生じる前から尿中アルブミン排泄を抑制した。尿ザイモグラフィーで他のセリンプロテアーゼ活性化は確認できなかった。以上の所見から、糸球体障害にプラスミンを含めたいくつかのセリンプロテアーゼが関与しており、セリンプロテアーゼを標的とした新たな腎疾患治療薬の可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究では糸球体障害を誘導するセリンプロテアーゼの同定と治療応用の可能性を検討している。候補セリンプロテアーゼとしてプラスミンを検出しており、合成セリンプロテアーゼ阻害薬によるプラスミン活性抑制が糸球体障害を軽減するという知見を得ている。
糸球体におけるプラスミン活性化機序(uPAやtPA等のプラスミン活性化因子関与)を明らかにする。これまで使用しているセリンプロテアーゼ阻害薬カモスタットは特定のセリンプロテアーゼに対する特異性が高いものではないため、治療効果が標的セリンプロテアーゼ・プラスミンを阻害したことによる効果であるかは不明である。そのためプラスミンに特異性の高いセリンプロテアーゼ阻害薬の治療効果も検討する。また、我々が用いているザイモグラフィーで検出できないセリンプロテアーゼが腎障害に関与している可能性も示唆され、新規セリンプロテアーゼの同定法について検討する。
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