223人のIgA腎症患者において、血中TNF受容体(TNFRs:TNFR1、TNFR2)濃度と各種臨床所見との関連性を検討した。多変量解析の結果、糸球体濾過量低下は高齢、高尿酸血症のほか血中TNFRs濃度高値と有意な関連性を認めた。また、扁桃摘出術+ステロイドパルス治療前後の77人において、血中TNFRs濃度の変化を検討したところ扁桃摘出後には変化は認められなかった。しかし、ステロイドパルス治療後、血中TNFR2濃度のみ有意に低下した。 319人の維持血液透析患者を前向きに53ヵ月間followしたところ、88人が死亡した。試験登録時の血中TNFR濃度は、関連する臨床項目で補正後も、予後予測に有用であった。一方、血中TNFαおよびPGRN濃度は予測マーカーではなかった。 プログラヌリン(PGRN)ノックアウト(KO)マウスとそのコントロール(WT)マウスに対して高脂肪食負荷を行い、形質を比較検討した。通常食下では、KOとWTマウスの間には、体重、アルブミン尿など形質の差は認められなかった。一方、高脂肪食下では、KOマウスではWTマウスと比較して、体重は減少傾向にあったが、アルブミン尿、尿中KIM-1は増加した。また、腎内のMCP1、VCAM1 mRNAなど炎症マーカーも悪化していた。腎組織上は、WTマウスでは尿細管・間質を中心に空胞化が顕著に認められたが、KOマウスでは、空胞化は著しく減少していた。空胞化を示す部位は脂肪染色では陰性であり、リン脂質によるものが考えられた。KOマウスではWTマウスと比較して組織的には改善を認めていたが、アルブミン尿が増加していた理由としては、KOマウスではメガリンの尿細管での発現が低下していることや腎内の炎症は悪化していることに起因している可能性が示唆された。
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