研究課題/領域番号 |
17K09713
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鈴木 祐介 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70372935)
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研究分担者 |
武藤 正浩 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (30790076)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | IgA腎症 / 扁桃 / APRIL / TACI / BCMA / TLR9 / 粘膜免疫 |
研究実績の概要 |
これまでに、マウスIgA腎症の病態に上気道粘膜上のTLR9の活性化が関与していることが報告されている。一方、我々は、IgA腎症患者で扁桃の胚中心におけるAPRIL(a proliferation-inducing ligand)発現が、慢性扁桃炎患者の扁桃と比較して極めて増強し、疾患重症度と相関することを近年報告した。TLR9はB細胞上に発現が認められることから、『IgA腎症患者扁桃B細胞が過剰なTLR9の活性化を介し、APRIL およびそのレセプター(TACI: cyclophilin ligand interactor、BCMA: the B-cellmaturation antigen)の発現を増強し、IgA腎症の増悪に関与している』と仮説を立てた。これまでに、慢性扁桃炎患者の扁桃より、FACS ARIA(BD Pharmingen)にてナイーブB細胞を抽出し、in vitroでTLR9のリガンドであるCpG-ODNによる刺激を行い、B細胞上のAPRIL、TACI、BCMAの発現が増強することを確認した。また、IgA腎症患者血清では、ヒンジ部O型糖鎖にガラクトースが欠損(Galactose deficient IgA1: Gd-IgA1)しているIgA1が増加していることが知られている。近年我々は、Gd-IgA1に特異性のあるモノクローナル抗体”KM55”を開発し、これを用い腎糸球体の免疫染色を行い、IgA腎症においてメサンギウム領域に沈着しているIgAは確かにGd-IgA1であることを証明した。本年度は、扁桃がGd-IgA1産生B細胞を誘導する組織であることを確認するために、IgA腎症患者扁桃をKM55で免疫染色したが、確かにGd-IgA1が存在することが証明された。現在、慢性扁桃炎患者の扁桃も同様に免疫染色を行い、IgA患者と比較検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IgA腎症患者及び、慢性扁桃腺患者の扁桃をGd-IgA1モノクローナル抗体KM55で免疫染色を行ったが、N数を集めることに当初の予定より時間がかかった。これ以上に研究計画に遅れが生じれば、共同研究という形で、他施設に協力を仰ぐことを考慮する。また、IgA腎症及び、慢性扁桃炎患者よりナイーブB細胞を抽出し、APRILにて、刺激し培養上清中の糖鎖異常IgA抗体の産生量の差異を確認することを試みているが、in vitroでのIgAを誘導することが困難で、APRIL単独では糖鎖異常IgA量を解析するだけの、十分なIgA量が採取できない。IL4を添加することでIgAをより誘導できるとの報告はあるが、ヒトIgA1抗体ヒンジ部の糖鎖修飾は、IL4によって修飾されてしまうことが報告されているため、IL4を添加することは好ましくない。よって、糖鎖修飾に影響を与えることのない培養系を確立する必要があり、IgAをvitroで誘導可能な培養系を再検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
IgA腎症扁桃には、Gd-IgA1が存在することがKM55による免役染色で明らかにされたが、N数は少ないものの慢性扁桃炎患者扁桃にも同様にGd-IgA1が観察された。N数を増やし、IgA腎症患者扁桃との染色パターンの差異を詳細に検証していく。In vitroにて、ARPILによるIgA誘導を起こす条件を検討し、十分なIgAが培養上清中に得られた後に、IgA腎症モデルマウスのナイーブB細胞をこの系にて培養し、培養上清中のGd-IgA1や免疫複合体の値をELISAにて確認していく。また、TLR9のSNPを解析し、stalk-1モノクローナル抗体による口蓋扁桃胚中心の染色強度、扁桃組織や扁桃B細胞における定量的PCR法によるAPRIL 発現量(APRILα、APRIL variants である APRIL δ, zeta)および臨床的パラメータの相関(尿潜血、尿蛋白、血清 IgA、Gd-IgA1、Gd-IgA1-IgG 免疫複合体)との相関を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体収集が当初予定より遅れたこともあり、その後の実験に使う物品費用が少なくなったことで未使用額が生じた。また、研究成果が学会、論文発表水準にまで達せず、海外を含めた学会などへの出向ができなかったこともあり、旅費が当初予定より低額となった。 使用計画としては、検体採取が概ね完了しつつあることから、ELISA、FACS解析、in vitroでの培養に必要なサイトカイン等の物品を購入する。また、本年度は2年に開催される第15回国際IgA腎症シンポジウム(ブエノスアイレス)に参加する予定である。
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