これまでに、我々は、IgA腎症患者で扁桃の胚中心におけるAPRIL(a proliferation-inducing ligand)発現が、慢性扁桃炎患者の扁桃と比較して極めて増強し、疾患重症度と相関することを近年報告した。TLR9はB細胞上に発現が認められることから、『IgA腎症患者扁桃B細胞が過剰なTLR9の活性化を介し、APRIL およびそのレセプター(TACI: cyclophilin ligand interactor、BCMA: the B-cellmaturation antigen)の発現を増強し、IgA腎症の増悪に関与している』と仮説を立てた。これまでに、慢性扁桃炎患者の扁桃より、FACSARIA(BD Pharmingen)にてナイーブB細胞を抽出し、in vitroでTLR9のリガンドであるCpG-ODNによる刺激を行い、B細胞上のAPRIL、TACI、BCMAの発現が増強することを確認した。一方、IgA腎症患者血清では、ヒンジ部O型糖鎖にガラクトースが欠損(Galactose deficient IgA1: Gd-IgA1)しているIgA1が増加していることが知られている。近年我々は、Gd-IgA1に特異性のあるモノクローナル抗体”KM55”を開発し、これを用い腎糸球体の免疫染色を行い、IgA腎症においてメサンギウム領域に沈着しているIgAは確かにGd-IgA1であることを証明した。このKM55抗体を使った免疫染色により、Gd-IgA1は、IgA腎症患者及び慢性扁桃炎患者の扁桃に存在することを確認した。IgA腎症患者では、扁桃胚中心にGd-IgA1が偏って存在する傾向にあった。今後、扁桃胚中心におけるAPRIL陽性のB細胞がGd-IgA1を産生している可能性について検証し、その産生機序についても明らかにしていきたい。
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