研究課題/領域番号 |
17K09715
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
勝又 康弘 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (60349719)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膜性腎症 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、特発性膜性腎症の病態における、ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)の役割について、ヒトポドサイト細胞株を用いて明らかにすることを目的とする。本研究代表者らは、平成26-28年度の科研費基盤研究において、PLA2Rの安定形質発現株を作製し(従来報告は一過性発現細胞のみ)、同細胞を用いたウェスタンブロットとCell ELISAを開発し、日本人特発性膜性腎症においても、約50%の陽性率があること、また病勢評価や治療反応性予測に資するバイオマーカーであることなどを報告した。一方、本抗体は単なるバイオマーカーではなく、抗体ないしPLA2Rに病態的意義があることが推測されているが、その機序はまったく不明である。そこを明らかにすることが、本研究の新たな目的である。 本年度(平成29年度)は、ポドサイトのセルラインを用いて、抗PLA2R抗体の病原性についても検討する方針とした。安定した実験系を構築するためには、安定形質発現の構築が望ましいため、ポドサイトのセルラインにPLA2Rを恒常的に強発現させて病態研究をする方針とし、作製した(当初の予定期間内に完成しなかったので、補助事業期間延長の上、行われた)。 具体的には、安定形質発現株作製の第1段階として、まず、フルレングスのヒトPLA2R 遺伝子情報を合成した遺伝子をベクターに挿入し、次に、発現ベクターをヒトポドサイト細胞株にトランスフェクションし、目的遺伝子の発現をRT-PCRで確認した。トランスフェクション後の細胞を抗生剤を含む培地中で、約3か月間継代培養した。 樹立した安定発現細胞および宿主細胞からtotal RNAを抽出し、cDNAを合成した。PCRを行い、アガロースゲル電気泳動により増幅産物を確認した。また、フローサイトメトリー解析にて、目的蛋白(=ヒトPLA2R)の発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度(平成29年度)は、ヒト膜型ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)の安定形質発現ヒトポドサイト細胞株を作製し、それを用いて、抗PLA2R抗体陽性患者血清中の同抗体の、抗原(細胞株上に発現しているPLA2R)への特異的結合を検証し、患者血清中の抗PLA2R抗体のポドサイト細胞株への結合による、ポドサイト細胞株の形態的・機能的変化を評価する方針であったが、安定形質発現ヒトポドサイト細胞株の作製に想定以上の時間を要し、それ以外の検討はあまりできなかった。 当初見込みよりも、安定形質発現ヒトポドサイト細胞株の作製に想定以上の時間を要した理由としては、本研究代表者の所属施設において、外注委託や高額案件に関する手続きが複雑化した上、諸事情から停滞してしまったため、実際に作業を開始するのが、遅くなってしまったことがある。また、遺伝子導入後の細胞クローニングが3か月と、想定の倍近くかかってしまったことも一因である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(平成30年度)以降の計画としては、作製したPLA2R安定形質発現ヒトポドサイト細胞株を用いて、患者血清中抗PLA2R抗体の病原性について検討する予定である。 具体的には、PLA2R安定形質発現ヒトポドサイト細胞株を用いて、抗PLA2R抗体陽性患者血清中の同抗体の、抗原(細胞株上に発現しているPLA2R)への特異的結合を検証し、患者血清中の抗PLA2R抗体のポドサイト細胞株への結合による、ポドサイト細胞株の形態的・機能的変化を評価する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画としては、安定形質発現ヒトポドサイト細胞株を委託作製し、そこに研究資金をおもに使用する予定としていた。しかし、関連研究(抗PLA2R抗体の新規定量法の開発と日本人膜性腎症における臨床的有用性の検討)の残研究費を一部使用することによって、多くの部分を賄うことができたので、必要経費が大幅に減少した。 次年度は、研究資金に余裕ができたので、もう1つのヒトポドサイト細胞株にも、PLA2R安定形質発現株を作製し、抗PLA2R抗体の病原性について、より詳細な検討をする予定である。
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