研究実績の概要 |
昨年度までの IgA腎症や菲薄基底膜病に引き続き、種々の糸球体疾患に対し糸球体係蹄障害をIV型コラーゲンのα鎖[α(IV)鎖]と低真空走査電顕(LV-SEM)で検討した。膜性腎症、ループス腎炎、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、ANCA関連血管炎、抗糸球体基底膜 (anti-GBM)腎炎、骨髄移植後の血栓性微小血管症(TMA)など臨床で遭遇する種々の糸球体疾患の腎生検検体および動物実験モデル検体を用いて係蹄障害の特徴を検討した。それぞれの所見に共通する特徴が確認された。一次性・二次性膜性腎症で形成されるspikeは α3,4,5(IV)鎖で、LV-SEMのPAM染色ではGBM表面のクレーター状の突起として確認された。TMAや subendothelial depositによるGBMの二重化は α3,4,5 (IV)鎖とα1,1,2 (IV)鎖により形成され、LV-SEMではGBMの二重化が、mesangial depositによるメサンギウム増殖性病変はα1,1,2 (IV)鎖の増加と不規則なmesangial meshworkの増加により構成されていた。ANCA関連血管炎と anti-GBM GN はともに GBMのα3,4,5 (IV)鎖の不規則な減弱、LV-SEMによるGBMの不規則な削り取り像や裂孔のが同定できた。微小変化型ネフローゼ症候群やFSGSではLV-SEMのPt-blue染色やPAMとPt-blue二重染色で係蹄上皮細胞の足突起の消失が確認された。糸球体疾患の係蹄障害は、α(IV)鎖による質的な変化やLV-SEMによる超微形態所見で特徴づけられ、病態の詳細な把握のために役立つことを明らかにした。蓄積された尿検体を用いて、尿中ELISAによるIV型コラーゲンのα鎖の測定系確立と質量分析 (LC-MS/MS)による微量蛋白の検討を進めている。
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