研究実績の概要 |
メチオニン(Met)/S-アデノシルメチオニン(SAM)代謝の変異及び腎障害の進展機序をmechnistic target of rapamycin complex1 (mTORC1)とオートファジー制御の観点から解明することを目的と研究をすすめた。24週齢雄2型糖尿病/肥満(Wistar fatty)ラットを, 1)非糖尿病(Cont), 2)糖尿病(DM)(標準食; 蛋白質23.84%, Met 0.64%), 3)DM+低蛋白質食(LPD)(蛋白質5.77%, Met 0.15%), 4)DM+LPD+Met添加食(標準食と同等; 0.64%)に分別し20週間介入した. その結果、腎皮質グリシンNメチルトランスフェラーゼ(Gnmt)(SAM代謝酵素)発現はContに比べDMでは有意に低下し,またSAM免疫組織染色にてもContに比べDMでその染色強度は増強していた. 一方DM+LPDでは腎Gnmt発現はDMと同等であるもSAM染色強度は低下していた. 尿中アルブミン・L-FABP排泄量は, Contと比べDMにて有意に増加し, DM+LPDで低下も, DM+LPD+MetにてLPDによるそれら改善効果は打ち消された. 腎線維化・尿細管細胞障害・炎症性変異もまたContに比べDMにて有意に増加し, DM+LPDにて低下も, DM+LPD+Metにてそれらの効果は消失した. さらにLPDによるDM腎におけるmTORC1の活性化抑制及びオートファジー低下の回復・SAM免疫染色強度の低下に対する効果もMet負荷にて打ち消された. 以上より、2型糖尿病/肥満ラットでは, 腎尿細管細胞におけるGnmt低下に起因するSAM代謝の低下とSAM蓄積がmTORC1の活性化及びオートファジーの低下を誘導し, DKDの病態形成に関与している可能性が考えられた.
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