研究実績の概要 |
背景:Mammalian target of rapamycin(mTOR)は、外界刺激に応答する細胞増殖・分化シグナルを制御するマスター分子で、抗腫瘍・免疫抑制薬の標的として注目を集めている。mTORシグナル亢進は、結節硬化症(Tuberous sclerosis:TSC1or 2変異)における腎嚢胞、腫瘍形成のドライバーとして知られている。さらにmTOR経路は優性遺伝型多発性嚢胞腎(Autosomal dominant polycystic kidney disease ADPKD, PKD1 or 2 変異)の発症にも関与している。しかしmTOR経路がどのように嚢胞形成に関わるか、まだ多くは未解決である。 目的:細胞表面受容体Xのプロモーターを用いて、Tsc1コンディショナルKO(Tsc1 flox/flox: 遺伝子X Cre)マウスの作成したところ、偶然にも多発性腎嚢胞を発症した。このマウスの嚢胞の発症機序を明らかにし、嚢胞抑制化に役立つ新しいmTORシグナル阻害標的を同定することを目的とした。方法: Tsc1 flox/flox: 遺伝子XCreマウスの腎組織を用いて、免疫染色、ウエスタン解析、発現プロフィール解析を行い、嚢胞形成に関与する増殖シグナル、アポトーシスの特性を調べた。 結果: Tsc1flox/flox: 遺伝子XCreマウスの腎は、生後7-10日頃から皮質部分の遠位~集合管から嚢胞形成が始まり、生後4週100%肉眼的に腫大した嚢胞を確認で きた。嚢胞の組織分布はヒト優性遺伝型多発性嚢胞腎と合致した。嚢胞を縁取る尿細管細胞は、立方型で核異型を伴うものと、扁平なものとが混在しており、一部に、Ki-67, PCNA陽性、P-S6陽性を示した。
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