高齢化とライフスタイルの変化は慢性腎臓病(CKD)患者数を急速に増加させた。CKD患者は高頻度に心、脳血管合併症を有するためCKDの確実な治療方法を確立することが喫緊である。CKDにかかる医療費は4兆円/年を超え、社会問題である。故に医療コストを鑑みた治療法確立が求められる。CKD患者の腸内フローラは悪化し、尿毒症物質が増加することでさらなる腎機能低下が生じる。研究代表者は腎糸球体内インスリンシグナル異常がCKD進展・増悪に重要であることを示している。本研究では今まで明らかにされてこなかったプレバイオティクスによる腸内フローラ改善がもたらすインスリン受容体基質(IRS)1を中心とした糸球体内インスリンシグナルへの影響と腎保護効果を検討した。腎不全モデルラットを作成し、プレバイオティクスとしてラクツロースを投与、腸内フローラと腎機能、腎組織への影響を確認した。ラクツロース投与群の腸内フローラを次世代シーケンサーを用いて解析するといわゆる善玉菌優位になっていることが確認された。同時にラクツロース投与群は腎不全モデル群に比してアルブミン尿が有意に減少すると共に糸球体濾過量の改善を認めた。 本研究の結果から「腸腎連関」という新たな概念に基づくCKD治療法の確立が期待される。プレバイオティクスはヒトに直接消化、吸収されない成分であり安全性が高く、さらに安価である。つまり、本研究の成果により低リスク、かつ低コストCKD新規治療法が確立することが考えられ、そのインパクトは極めて大きいと考えられた。
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