慢性腎臓病患者は、尿毒素の影響とされる免疫力の低下状態にさらされている。また末期腎不全により透析導入となった場合、導入後1年以内で、感染症のリスクや、がん発症率が極めて上昇することが知られている。本研究は、免疫応答の制御に関わる免疫チェックポイント機構を司るPD-1やCTLA-4分子などに着目して、慢性腎不全の免疫力低下への影響について、ヒトリンパ球を用いた免疫学的手法による解析を行う。 ヒトリンパ球を対象とした表面抗原をフローサイトメーターで検知する手法により、免疫チェックポイント機構のマーカーを個々の細胞レベルで解析することが可能であり、それらの発現細胞の割合や、抗原の発現強度を確認できる。また、免疫チェックチェックポイント機構のオン/オフにおける、リンパ球の刺激による細胞増殖やサイトカインの産生の変化を定量的に、クリアカットな検出により測定することで、機能解析を行うことが可能である。 血液透析患者40名、腎癌患者2名、膀胱癌患者2名に対して、研究に同意いただいた方から、予定していた血液検体の採取、保存を完了した。血液透析患者からはQOL調査についても2名を除く38名から聴取を行った。 QOL調査はKDQOL-SF version1.3を用いた。解析可能であった血液透析導入患者9名と血液透析導入1年以上経過の患者17名について、腎疾患特異的尺度と包括的尺度(SF-36)を算出した。尺度の中で、症状、ソーシャル・サポート、透析スタッフからの励まし、透析ケアに対する患者満足度、身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、活力、日常役割機能(精神)について、透析導入患者が透析導入1年以上経過の患者に対して有意に項目素得点の平均値が高い結果であった。 現在、採取したリンパ球に対する免疫学的解析として実験を繰り返しているところであり、近日中に解析結果を発表予定である。
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