研究実績の概要 |
多くの生理機能を担うリンの生体濃度は厳密にコントロールされており、この恒常性の破綻は骨代謝異常、成長遅延のみならず生命の危険をも招く。生体内リン代謝調節に大きな関わりをもつ臓器は入り口となる腸管、最終調節をする腎臓、貯蔵する骨である。またリン利尿因子PTHを分泌する副甲状腺やFGF23を分泌する骨は生体内リン濃度を感知する臓器とも考えられる。このことは既にリン代謝には腸管-副甲状腺-骨-腎臓という多臓器が関連することが示されている。しかしながら、これらの全てのシステマティックなつながりについては未だ未解決な部分がある。本研究では、既存のリン代謝調節因子を介さない臓器間ネットワークを解明するために、①腸管をリン感受の発信源としてa, 腸管-唾液腺、b, 腸管-腎臓、c, 腸管-脳の神経ネットワークを介する相互作用があるという仮説をたて検討した。平成30年は 腸管-腎臓に関する検討について行なった。迷走神経切除術、偽手術を行なったラットを用いた。慢性的に食事リン含量の低い餌を与え急性リン負荷実験を行い、血液、尿、および唾液リン応答の検討を行った。急性リン負荷により偽手術群では経時的に血中リン濃度の上昇が認められたが、投与30分で最大値を示し、その後平衡状態を保ち、低下した。一方切除群では、経時的に上昇を続け、低下傾向は認められなかった。リン負荷60分において尿中リン排泄は偽手術群では増加したが、切除群では偽手術群と比較して有為に抑制されていた。リン利尿因子PTH濃度を測定したところリン負荷60分において偽手術群では著しく増加したが、切除群では抑制されていた。これらの応答はリン水の血液への投与ではリン水投与により血中リン濃度の上昇、PTH上昇、尿中リン排泄の増加が偽手術群と切除群に違いはなかった。 以上より、腸管を介するリン負荷は神経を介するシグナルが存在することが示唆された
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