研究課題
リン恒常性の破綻は骨代謝異常、成長遅延のみならず生命の危険をも招く。生体内リン代謝調節に大きな関わりをもつ臓器は入り口となる腸管、最終調節をする腎臓、貯蔵する骨である。またリン利尿因子PTHを分泌する副甲状腺やFGF23を分泌する骨は生体内リン濃度を感知する臓器とも考えられる。リン代謝には腸管-副甲状腺-骨-腎臓という多臓器が関連することが示されている。しかし、これらの全てのシステマティックなつながりについては未解決な部分がある。本研究では、既存のリン代謝調節因子を介さない臓器間ネットワークを解明するために、腸管をリン感受の発信源として腸管-唾液腺、腸管-腎臓の神経ネットワークがあるという仮説をたてた。まず、迷走神経切除術を確立し、急性リン負荷応答実験、関連分子の動きについて検討した。 [腸管-唾液腺] sham群では急性リン負荷により唾液リン排泄の増加と唾液腺に発現するリン酸トランスポーターはエンドサイトーシスを起こし発現減少を示す。迷走神経切除術群では、唾液リン排泄の増加割合は増加し、リン酸トランスポータータンパク質発現の素早い減少も同様に認められた。平成31年度は、関連分子の発現について検討した。[腸管-腎臓] sham群では急性リン負荷により尿へのリン排泄の増加と腎近位尿細管に発現するリン酸トランスポーターはエンドサイトーシスを起こし発現減少を示す。切除術群では、尿中リン排泄の増加は減少し、リン酸トランスポータータンパク質発現の素早い減少は、時間的に遅れが認められた。腎臓リン酸トランスポーターmRNA発現に両群間に違いが認められなかったことから分解調節系へのシグナル伝達に影響があると考えられた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
Physiological Reports
巻: 8 ページ: 1-16
10.14814/phy2.14324
Clin Exp Nephrol
巻: 23 ページ: 898-907