研究課題
(1)CKDによる血管石灰化モデルマウスの確立当初の計画では、C3H/HeN, C3H/HeJ, apoEKOマウス(8週齢)に4週間アデニン負荷を行うことにより腎不全を惹起し、その後高リン食あるいは高脂肪食に変更して血管石灰化病変の作製を試みる予定であったが、予備検討によりアデニン負荷を中断すると腎機能が改善し、血管石灰化病変が形成されないことから、アデニン負荷を可能な限り継続する必要があると判断した。そこで、apoEノックアウト(apoEKO)マウスに0.2%アデニンを含む高リン食(Ca1.0%, P 1.2%; 20% lactose)を9週間投与したところ、大動脈弓および主要な分枝に石灰化病変が確認された。現在、CKDによる血管石灰化プロトコールとして7週間の 0.2%アデニン・高リン食+5週間の高リン食を用いて検討中である。(2)血管平滑筋細胞におけるLPSの石灰化促進機能の解析ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞(HASMC)を用いてすでに確立しているin vitroでの石灰化実験系においてLPSの石灰化促進効果を検討した。HASMCを骨芽細胞分化メディウムおよびoncostatin M存在下で培養すると、培養4日目にはRunx2およびALPなどの骨芽細胞マーカーの発現が誘導され、8日目にはin vitroでの石灰化が認められた。この系にLPS (100 ng/mlまたは1000 ng/ml)を添加すると、4日目には対照群に比してLPS 1000 ng/ml添加群では有意なALPの発現増加がALP染色およびALP活性測定により認められた。さらに、8日目にはLPSがin vitroでの石灰化を容量依存的に上昇させることが確認された。今後、このLPSによる石灰化促進作用の機序について検討する予定である。
3: やや遅れている
CKDによる血管石灰化モデルマウスの確立が当初予定より遅れている。当初の計画では、0.2%アデニン負荷を4週間行うことにより不可逆的な腎障害が誘導できるものと想定していたが、予備検討の結果ではアデニン負荷の中断により腎機能が改善し血管石灰化病変が形成されなかったことから、プロトコールの変更を余儀なくされた。in vitroでの血管平滑筋細胞を用いた研究はほぼ計画通りに進行しており、全体としてはやや遅れていると判断した。
CKDによる血管石灰化モデルマウスをapoEKO、C3H/HeN、C3H/HeJの3系統において確立することを最優先する。もし、血管石灰化病変が予想通りに形成されない場合は心血管系に石灰化を起こしやすいとされるDBA/2系統の使用も検討する。in vitroの研究については今後LPSの石灰化促進作用の機序について検討を進める。
モデルマウスの作製が計画より遅れており、マウスおよびマウス飼料などin vivoでの研究に関連する費用が当初計画に比して少なかったため。次年度においてin vivoでの研究に今年度の残金を充当する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件)
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