研究実績の概要 |
(1)アデニン負荷慢性腎臓病モデルマウスにおける血管石灰化の検討 これまでの実験結果を踏まえて、リン食(Ca: 1.0%, P: 2.0%, Na:0.5%)を負荷することにより血管石灰化病変の程度を比較検討した。実験終了時の生存率はC3H/HeNが40.0% (6/15)、C3H/HeJが46.7% (7/15)であり、明らかな差は見られなかった。体重に関しても有意な差は認めなかった(17.3±0.53 g vs 16.9±1.32 g)。大動脈および主要分枝における石灰化の割合はC3H/HeNマウスに比してC3H/HeJマウスにおいて有意に高かった(2/5 vs 7/7) (Fisher exact test, p<0.05)。血清データでは、C3H/HeNマウスに比してC3H/HeJマウスでは、腎機能(BUN, Cre)の低下およびミネラル代謝異常(高リン血症、低カルシウム血症)の程度が有意に弱かった(Tukey’s test, p<0.05)。
(2)血管平滑筋細胞におけるLPSの石灰化促進機能の解析 ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞(HASMC)を用いてin vitroでの石灰化に対するLPSの作用について検討した。HASMCを骨芽細胞分化メディウム(ODM)存在下で4週間培養することによりin vitroでの石灰化を誘導した。4週間後のHASMCの石灰化をアリザリンレッド染色により評価したところ、ODM単独に比してLPS (100 ng/mlあるいは1000 ng/ml)の同時添加により石灰化が促進されることが確認された。また、細胞層のカルシウム沈着量もLPSの用量に依存して有意に増加した。同様に、アルカリホスファターゼ(ALP)活性もLPSの同時添加により用量依存的に上昇した。また、骨芽細胞分化マーカー(Runx2, ALP, IBSP, BGP)の発現をreal time RT-PCR法により解析したところ、ALPの発現がLPSの同時添加により促進されたが、Rux2, IBSP, BGPの発現はODM単独添加に比してむしろ低下させた。
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