研究課題
本研究課題において解析標的となるKlothoタンパク質は、腎皮質部の近位・遠位尿細管に発現が認められる。昨年度の研究より、マウス(12週齢♂)への4週間の高リン負荷が、腎臓でのKlothoの発現をmRNAレベルで50%、タンパク質レベルで80%程度減弱させることを見出した。そしてこのとき、同じく腎臓において性ホルモンと副腎皮質ホルモンによって制御されるいくつかの遺伝子の発現が変動していることを見出した。この結果を受け、本年度は、この高リン負荷による腎臓でのKlothoの発現変動が雄マウスに特異的に認められる現象か否かを検証した。その結果、マウス(12週齢♀)への4週間のリン負荷は、雄マウスよりも低含有量のリン負荷により雄マウスよりも顕著にKlotho発現量の減少が誘導されることが明らかになった。このことから高リン負荷に対する腎臓でのKlotho発現制御への感受性が性差によって異なることが明らかになった。そこで次に、ヒト近位尿細管由来の2種類の培養細胞HK-2細胞ならびにHKC-8細胞に性ホルモン(テストステロン、5alphaジヒドロテストステロン、エストロゲン、プロゲステロン)をそれぞれ添加し、内在性Klothoの発現量の変動活性を検討したところ、HKC-8細胞に高濃度のテストステロンを添加したときのみ、およそ2倍程度のKlotho mRNAの発現量が増加することを見出した。定常状態におけるアンドロゲン(テストステロン)受容体の発現量は、HK-2細胞に比べてHKC-8細胞の方が30倍ほど高く、このことが2つの異なる尿細管細胞でのKlotho発現制御におけるテストステロンの感受性の違いを生んでいると考えている。
2: おおむね順調に進展している
高リン負荷を導入したマウスを用いた個体レベルの解析より、腎臓におけるKlotho発現制御機構には性差の違いあることが示唆され、その原因が、Klotho発現細胞を用いて解析から、男性ホルモンであるテストステロン作用にある可能性が示唆されたため。
高リン食負荷によりマウスが高リン血症状態にあるとき、過剰な血中リンは腎臓から不揮発性酸として排泄さることになる。このリン負荷の掛かった状況において腎臓でのKlotho発現制御には性差による感受性の違いがあることが確認された。さらに、昨年度と今年度の解析より培養細胞レベルにおける内在性Klothoの発現制御は、リン酸・pH・ステロイドホルモンの作用により調節されていることが明らかとなった。これらの解析結果より、培養細胞レベルでのヒトKlothoプロモーターに対するこれら因子の作用を検討し、それぞれの因子が作用するプロモーター領域の同定を試みる。HK-2細胞に関しては、テストステロン受容体の発現レベルが著しく減弱しているため、この受容体cDNAを導入した検討も行いたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
iScience
巻: 2 ページ: 238-268
10.1016/j.isci.2018.03.014.