研究課題/領域番号 |
17K09734
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
横田 健一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50424156)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルドステロン / MR / ミネラルコルチコイド受容体 |
研究実績の概要 |
MRは核内受容体に属する蛋白であり、アルドステロン依存性にENaCやSGK1などの標的遺伝子の発現を促進し、腎遠位尿細管においてナトリウムの再吸収を通じ血圧を上昇させる機能を持つ。しかしながら、MR活性化に関わる分子メカニズムは未だ詳細が不明のままである。我々はFLAGタグ付きMR安定発現HEK293細胞を樹立し、その細胞から核抽出液を取得し、FLAG抗体によるアフィニティ精製を行い、LC-MS/MSによる同定を行うことで、C14orf43という機能未知因子をMR相互作用因子候補として同定した。そこでマウス腎臓組織の免疫染色を通じてMRとの共局在を確認するとともに、qPCR法でアルドステロン依存性のMR標的遺伝子の定量化測定を行い、C14orf43がMRの新規co-repressorであることを示す結果を得た。またC14orf43のMR転写抑制機能をさらに詳細に検討するために、C14orf43と相互作用する蛋白質の網羅的同定を、安定発現細胞株の樹立→大量培養→FLAG抗体による精製→LS-MS/MSを用いた方法でより精度を高めて試みたところHDAC1やHDAC2、RPD3、SENP3、TdIF1、CHD4、RBBP4、MTA2、MBD4などのエピゲノム制御因子蛋白を同定できた。以上の結果からC14orf43がヒストン脱アセチル化やユビキチン化、DNAメチル化などを介してMRの転写を負に制御していることが考えられた。C14orf43ノックアウトマウスの作成については、従来からのアプローチによるキメラマウスからのC14orf43 floxマウスの作出は困難であったため、現在新たにゲノム編集技術を用いて作出を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
vitroの実験系については、おおむね計画通り進行している。これまでのvivoの実験については、作出できたキメラマウス2匹のうち、キメラ率が低いオス個体では、野生型マウスとの交配で出生するマウスが全て野生型マウスであり、このキメラマウスからのC14orf43 floxマウスの作出は困難であった。また、キメラ率が高いキメラマウスのオス個体では、野生型メスとの交配で不妊を呈した。そこで、動物実験センターにお願いし、オスキメラマウスの精巣上体から精子を取得する体外受精を試みたが、開腹したところオスキメラマウスの精巣上体がないことが判明し、本個体からもヘテロマウスの作出が不可能であることが判明した。以上の結果から、得られたES細胞の質の低下が考えられた。そこで現在は、別のアプローチからのノックアウトマウス作出を試みている。すなわち、C57BL/6マウスの受精卵にCAS9蛋白、crRNA、tracrRNAを導入することにより、C14orf43のexon2のゲノムDNA切断場所にindelsを挿入し、遺伝子機能が失われることによりノックアウトマウスを作出する方法である。すでにcrRNA1の設計として3か所に絞り込みを行っており、その中から1つの配列に絞り込んだのち、マウス受精卵に遺伝子を導入予定となっている。得られるマウスはヘテロノックアウトマウスおよびホモノックアウトマウスの両者であり、これらのマウスの表現型解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記のマウス受精卵をマウス子宮に戻し、個体を誕生させたうえでC14orf43 ホモ、ヘテロノックアウトマウスの存在をジェノタイピングから確認する。この得られたC14orf43ノックアウトマウスについては、妊娠能力、体格、体長の変化などをまず観察する。そして内分泌領域に変化がみられた場合、本研究室において解析手法が確立しているため、系統的な解析を行う。それ以外の場合は、適宜その分野の専門的研究者と共同研究を行う。特に血圧や前回質調節で変化がみられた場合には、8週齢になった時点でコントロール群とともに代謝ゲージ内で10日間飼育し、毎日体重を測定し、飲水量および蓄尿にて尿量も測定する。また、毎日非観血血圧測定計にてこれらマウスの血圧を測定する。またorbital venous plexusから血液を採取し、血液および尿サンプルから血中尿中電解質、各種ホルモン、浸透圧など様々な生理学的パラメータを測定し、GFRや尿中ナトリウム排泄率、TTKGなどを算出する。また、減塩食実験、DOCA-salt負荷実験、スピロノラクトン投与実験を同様に行い、採血、畜尿などの解析から、C14orf43のMR活性化、血圧調節に関わる機能を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2018年度にC14orf43ノックアウトマウスの作出が遅延しているからである。現在、ゲノム編集技術を用いてノックアウトマウスを作出する方法を試みており、これらのマウスの表現型解析を行う予定である。これらの研究に次年度使用額を充当する。
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