研究課題/領域番号 |
17K09735
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮下 和季 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (50378759)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高血圧 / Sirt3 / 加齢 / ヒストンアセチル化 / 腸管 / ナトリウム吸収 / NHE3 |
研究実績の概要 |
高血圧は加齢とともに発症頻度が増加する加齢性疾患である。加齢とともに発現が低下する、NAD依存性脱アセチル化酵素であるSirt3は、加齢性疾患発症との関連が注目されている。そこで我々は、エピゲノム変容を介した高血圧発症に関与する分子としてSirt3に着目した。 これまでにSirt3は肺高血圧症発症との関連が注目されているが、血圧に与える影響は定かではない。野生型マウスを用いた基礎検討では、加齢に伴うSirt3発現の低下は、心臓・腎臓と比較して腸管で顕著であった。我々は加齢に伴う血圧上昇に、加齢に伴うSirt3発現の低下が関与するとの仮説のもと、Sirt3全身欠損マウスの血圧規定因子を検討した。すると、6週令の若齢Sirt3KOマウスは野生型マウスと比較して、血圧が低値で推移した。30週令まで観察すると、Sirt3KOマウスと野生型マウスの体重は同等となった。すなわち、当初の仮説と反して、Sirt3の低下は血圧低下に関与しており、また、Sirt3欠損状態においては、加齢に伴う血圧上昇が加速した。体重が両群同等であるにも関わらず、Sirt3KOマウスではインピーダンス法で測定した体内水分量が低値で推移した。Sirt3KOマウスで尿中Na排泄量が有意に低いのに対し、便中Na排泄量は有意に高値であった。また、腎臓組織でのレニン遺伝子発現はSirt3KOマウスで有意に高値であった。一方、小腸組織でのNHE3遺伝子発現はSirt3KOマウスで有意に低下していた。以上よりNHE3低下に伴う便中Na排泄の増加が、Sirt3KOマウスにおける体内水分量低下、血圧低下の一因となっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではこれまでに、マウスを用いて塩分負荷に伴う腎臓のナトリウム輸送体の発現変化を明らかにし、当初予定通り高血圧発症に関与するエピゲノム変化を見出してきた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で、高血圧発症に関与する腸管のNa輸送体の発現変化を見出した。腸管Na輸送とその高血圧発症への関与に関する知見はこれまで乏しく、その研究は高血圧研究・高血圧治療の新しい分野を開拓する可能性がある。したがって我々は、腸管Na輸送を制御する分子機構のさらなる解析を推進する所存である。
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