本研究の目的は尿毒症病態下における骨組織の副甲状腺ホルモン(PTH)に対する抵抗性の機序を病態機序を解明し、加えてPTH抵抗性の評価法を確立、臨床における有用性を探索することにあった。従来、主に骨組織の病理学的検討(静的検討)で進められてきた骨組織のPTH抵抗性に関する研究に対し、本研究ではiPS細胞由来の骨細胞を用いて動的な研究を行うことに重点を置いた。 腎不全モデル(5/6腎摘ラット)の末梢血や脂肪細胞等の体細胞から、iPS細胞を作製し、骨芽細胞の誘導を試みたが、収量及びその解析結果が安定せず、苦慮した。そのため、骨髄や循環血の間葉系幹細胞からosteoblastic-like cell (Obc)を誘導し、そのphenotypeを検討した。コントロール及び尿毒症モデルからObcを作製し、様々な細胞応答を検討し、尿毒症動物由来のObcはコントロール由来のObcに比較して、PTHやリン(P)添加刺激に対してアルカリフォスファターゼや石灰化などの応答が異なることを明らかにした(Biochem Biophys Res Commun (in press))。更に尿毒症モデルに、P制限やvitamin D receptor activatorなどの治療を行い、ObcのPTH抵抗性の変化を検証中である。また、Obcのデータが実際の骨組織の病理学的な変化のsurogate markerとなり得るかを検討し、石灰化などの一部の病理学的な変化と一致することを明らかにした。 動物モデル由来のiPS細胞から骨芽細胞の安定した誘導については、学内外の研究室の協力を得て、研究を進めている。しかしながら、尿毒症モデルのiPS細胞より誘導したObcの収量やそのphenotypeには大きなばらつきがあり、有用な病態解析のツールとは言えないのが現状であり、新たな技術開発が必要であると考えられる。
|