研究課題
本研究ではキマーゼ特異的な阻害薬、非活性体の異性体および溶媒をPTFE人工血管外膜側にコーティングしたものと非コーティングPTFE人工血管をハムスターの皮下に移植し、その3カ月後に摘出した。その後、カルノア固定後にパラフィンブロックを作製し、各ブロックから3μmのパラフィン切片を切り出し、Toluidine Blue染色を行った。 Toluidine Blue染色では肥満細胞が紫色に染色され、その他の細胞核は青色に染色される。従って、人工血管壁の浸潤細胞数を計測するのに非常に便利である。結果、(1)PTFE人工血管壁を溶媒のみでコーティングしただけでも移植3ヵ月後の人工血管壁への細胞浸潤を有意に抑えていた。(2)キマーゼ阻害薬を溶媒アンカーなしでコーティングを施しても細胞浸潤に対する抑止効果を認めた。(3)キマーゼ阻害薬を溶媒アンカーを介してコーティングすると細胞浸潤に対する抑止効果がさらに増強された。(4)キマーゼ阻害薬の非活性体をコーティングすると非コーティング群に比べて細胞浸潤を有意に抑制できたが、キマーゼ阻害薬そのものをコーティングした群に比べては有意に弱かった。今回、PTFE人工血管壁の溶媒のみでのコーティングでも移植3ヵ月後の人工血管壁への細胞浸潤に対する有意な抑制効果を認めた。その機序については明らかではないが、人工血管コーティングが線維芽細胞などの細胞浸潤を物理的に抑制する可能性が示唆された。従って、PTFE人工血管外膜側コーティングが人工血管移植後の狭窄に対する予防策のホープになる可能性が示唆された。キマーゼ阻害薬コーティング群では人工血管移植後の細胞浸潤に対する更なる抑制効果を示す傾向にあるものの、溶媒コーティング群とは有意差を示さなかった。
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