研究課題/領域番号 |
17K09742
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
中西 健 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70217769)
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研究分担者 |
長澤 康行 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10379167)
倉賀野 隆裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60411998)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 血管石灰化 / リン / 鉄 / 酸化ストレス / フェリチン |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病患者において、動脈中膜にみられる血管石灰化は循環器系合併症の重要な促進因子であり、リン・カルシウム代謝異常が関与している。臨床的にはリンの厳密な管理が推奨されているが、その発現メカニズムにおいては高リン血症だけでなく他の多くの因子が関与しているため、その一部しか制御できない。とくに酸化ストレスとの強い関連性が報告されているが、鉄が酸化ストレスの重要な因子であることを鑑みると、鉄代謝が石灰化に影響を与える可能性が高い。すでに、臨床的には鉄調節ホルモン「hepcidin」と血管石灰化の関係、培養細胞系において培養液中のtransferrin (Tf) 結合鉄が血管石灰化を促進することを報告している。 本研究では SDラットにおいてアデニン(摂餌中 0.75%)による腎不全を惹起し、さらに経口でリン(摂餌中1.2%)を負荷し大動脈石灰化の観察・評価を実施中である。このモデルにおいて、さらに鉄の影響を観察するため鉄剤の経口および腹腔内投与による影響を検討している。血液検査ではBUN Creの数倍の上昇およびリンも軽度の上昇をみとめ、代謝性アシドーシスをともない腎不全状態ができるようになった。現在採取した大動脈を von Kossa 染色・ICPMSによる血管Ca含量により血管石灰化を観察中である。 現在の解決すべき問題としては、同じ条件で飼育しても摂餌量のばらつきによると考えられる腎不全の進行・血管石灰化の程度が同じ条件の中でも大きく変動するため、鉄剤投与の影響が明らかにできていない点があげられる。現在検討中の実験条件では、より軽い腎不全状態を長期間持続させることによりすべてのラットにおいて同程度の腎不全状態・血管石灰化が得られるように改良中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
兵庫医科大学の動物実験施設が 2017年10月より約6ヶ月間閉鎖されており、飼育が困難な状況にあったため 動物の購入・腎不全状態負荷が継続して実施できていなかった。さらに2018年再開時に 研究代表者が非常勤勤務となり、一時的に持続して研究を続けられなくなったので進捗が遅れていた。
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今後の研究の推進方策 |
以前の検討より低いアデニン濃度0.6%含有の餌を用い、さらに従来より長期の8週間において腎不全ラットを作成し、同時に高リン食の負荷を行った条件で大動脈の石灰化を観察する。さらに、経口および腹腔内鉄投与を行い、鉄剤投与法の相違による石灰化への影響を評価する。 評価項目は、① 血清において鉄、 ferritin、 TSAT、 hepcidin, CRP および炎症性サイトカインTNFαを測定、② 大動脈のvon Kossa組織染色により石灰化を評価、③ ICPMSにより大動脈標本のCaおよび鉄含量を評価、④ 血管壁・心筋での鉄輸送蛋白(DMT-1 TfR)および貯蔵蛋白発現(H型・L型ferritin)発現をWestern blot法により半定量、 ⑤ 血管壁・心筋でのRT-PCRによるmTOR signalおよびH型ferritin発現を検討する。 さらに、 腎性貧血治療に用いられるerythropoiesis stimulating agents (ESA)やhypoxia inducible factor (HIF) stabilizerは ヘプシジン・TNFαを低下させると考えられるが、これらを投与することにより、血管石灰化が変化するかどうか検討する。⑦また、同モデルにおいて、免疫抑制薬 rapamycin, 降圧薬 diltiazemの石灰化への影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年後半から、動物実験施設が移転に伴い約半年間利用できなかったことに加えて、研究代表者が非常勤勤務となり一時的に持続して研究ができないことにより、研究の再立ち上げに時間がかかったため次年度使用額が生じた。本年度において、必要となる動物の飼育、消耗品などの購入等に使用する予定である
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