パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで多い神経変性疾患であり、加齢が最大の発症リスクであることから、現在進行中の高齢化社会において重要な疾患である。αシヌクレインはパーキンソン病の分子病態においてもっとも重要な分子である。αシヌクレインはシナプスに局在する一方で核にも存在するが、その役割はいまだ不明である。本研究では、αシヌクレインの核内における役割を調べる手がかりとして、まずαシヌクレインが相互作用を持つ核内タンパクのスクリーニングを行った。質量分析の結果、神経分化において重要な役割を果たすBAF複合体のいくつかのコンポーネントとの会合がみられた。αシヌクレインの過剰発現下では、BAF複合体が成熟せず、結果として神経細胞にとって必要となる遺伝子の発現が抑制されることが予想された。同時に会合がみられたヒストンメチル化酵素が触媒するヒストン修飾を手がかりとして、標的となる遺伝子をクロマチン免疫沈降を行い、産物を次世代シーケンサー解析にいより網羅的スクリーニングしたところ、神経細胞の機能維持に関わる機能を持つ複数の遺伝子の同定に成功した。中には、パーキンソン病治療において重大な合併症となる衝動制御関連の発現に関与する遺伝子が含まれていた。本遺伝子はモデル細胞において転写レベルでの発現変化に関しても確認しえるものであった。これらの知見は今後のパーキンソン病治療選択における個別化医療開発において重要な役割を果たすものと考えられる。
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