研究課題/領域番号 |
17K09747
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤松 恵 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00753675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ALS治療薬 / RNAアプタマー / ALSモデルマウス / カルシウム透過性 / 運動ニューロン / ADAR2 |
研究実績の概要 |
R1年度は、ALSモデルマウス(AR2マウス)を用いて、分子標的薬RNAアプタマーのALS治療薬としての可能性を評価した。これまで初期検討を行った3種類のアプタマー(FN1040、FN1008、FN58)のうち、より有効性が高いと評価されたFN1040については長期運動評価を行い、すでに有意な改善効果が確認されている。今年度はin vitroではFN1040よりもAMPA受容体阻害効果が高かったFN58について、さらにin vivoでの詳細な検討を、ALSモデルマウス(AR2マウス)を用いて、カルシウム透過性AMPA受容体を抑制することによる運動ニューロン死抑制効果、TDP-43細胞内局在変化に対する効果、およびローターロッドを用いた運動機能に対する効果を短期~長期で検討を行った。投与方法は、これまでと同様の脳室内カニューレを介して浸透圧ポンプからの持続的な投与による3か月の長期投与を行い、同時にローターロッドによる運動機能の評価を行ったところ、FN1040とほぼ同等の運動機能向上が確認できた。しかしながら、初期検討でも懸念された、FN1040では観られなかった鎮静作用がFN58では観察された。このFN58の投与開始直後の強い鎮静効果については、最終濃度の4分の1にした低用量から投与を開始し、段階的に用量増加をさせて忍容性を持たせることでほぼ改善が可能であった。投与1週間後には鎮静効果は観られなくなり、その後の運動機能評価に影響を与えなかった。運動機能評価的にはFN1040とFN58はほぼ同等の効果であったが、鎮静作用についてはFN1040ではほぼ観られないことから、現段階ではFN1040の方が有効性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3種類のRNAアプタマーについては短期での至適濃度評価は終了、うち2種類のRNAアプタマーについて、長期投与による運動機能評価が終了した。また鎮静効果の見られるRNAアプタマーについては、影響の出ない濃度でのプロトコルを確認し、ほぼ予定通りに終了した。これまでの結果について、現在論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで3種類のRNAアプタマーについて評価を行い、2種類については運動ニューロン死抑制効果、TDP-43の細胞内局在変化の改善、長期投与による運動機能向上が確認され、ALS治療薬としての可能性がさらに増加している。今後は、これまでの3種類の他に、さらにvitroでのAMPA受容体阻害効果の高いRNAアプタマーのマウスでの評価を追加するとともに、ヒトに向けた治療法につなげるべく、投与経路の検討および安全性の確認を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、実験に関わる費用の一部は別の予算を使用したことと、国際学会参加を取りやめた事による旅費の減額、さらに論文投稿が遅れているため論文発行代が計上できませんでした。次年度は実験に関わる費用、論文投稿代、学会発表代等を予定しています。
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