研究課題/領域番号 |
17K09747
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤松 恵 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00753675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ALS治療薬 / RNAアプタマー / ALSモデルマウス / カルシウム透過性 / 運動ニューロン / ADAR2 |
研究実績の概要 |
R2年度は、ALSモデルマウス(AR2マウス)を用いて、分子標的薬RNAアプタマーのALS治療薬としての可能性について、前年度までに評価を行った3種類のアプタマーのうち、2種類のFN1040およびFN58について、さらに検討を行った。投与経路はこれまでと同じ浸透圧ポンプに接続したカニューレを経由した脳室内投与である。特に、安全性の評価の一つとして、鎮静効果について検討を行った。FN1040投与群では、短期および長期での評価において鎮静作用はほぼ観察されない一方で、FN58投与群は短期評価の段階で投与直後から鎮静が強く観察された。その結果、FN58の長期運動機能評価においては投与初期に低濃度からの投与による馴化を行うこと、最終評価濃度をFN1040における30マイクロモル濃度ではなく20マイクロモル濃度で行うこととし評価が可能となった。3か月の長期投与期間中のローターロッドスコアによる運動機能評価では、FN58投与群はFN1040投与群同様、非投与群に比べて有意な運動機能の向上が確認されたが、一方、体重の増加がFN58投与群では観られなかった。鎮静作用がほぼ確認されないFN1040投与群および非投与群は、週齢に比して体重は増加していた。したがってFN58投与群で体重が増えなかった理由の一つとして鎮静作用により摂食量が減ったことが考えられる。摂食量については、これまでの検討項目として挙げていなかったため、次年度は確認のために摂食量の評価も追加で確認する予定である。しかしながら、長期の運動機能評価の結果は、2種類のRNAアプタマーFN1040、FN58とも非投与群に比較して有意に増加し、ALSモデルマウスの運動機能低下に対して効果的であると考えられ、治療薬としての可能性が示唆された。 上記結果を纏め、論文作成はほぼ終了、R3年度早期に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた3種類のRNAアプタマーについての短期至適濃度検討は終了、2種類のRNAアプタマーでの長期投与による運動機能評価も終了している。鎮静効果についても評価は終了しており、論文作成はほぼ終了しており、R3年度早期に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
FN58投与AR2マウスが、長期評価において体重増加が観られなかった原因として、鎮静によるものかどうかを確認する必要がある。鎮静により摂食量が減った可能性もあり、次年度に体重増加が観られなかった原因について観察を行う予定である。さらにFN58投与マウス群について、薬液投与後、数日を経過すると、眼に炎症を起こすマウスが一部少数のマウスで確認された。これについては、炎症を起こすものと起こさないものに分かれるため、現在のところ、薬液の影響によるものかは確認できていない。したがって、投与後の血中の炎症マーカーの測定を今後検討し、RNAアプタマーの副作用を含めて確認する予定である。 さらに、実際のヒトでの治療を考慮した場合について、脳室内投与ではなく髄腔内や皮下など別の投与ルートの検討も行い、さらに治療薬としての可能性を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行により、一部の実験が未終了であること、学会参加を控えており旅費等が未使用であったこと、論文投稿予定分が未使用であったことなどによる。
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